
東京都の港区で生活していると、周囲のアルバイト君たちには、すごく外国籍の人が多い。仕事場の一階のローソンで働いているのは何人もの「グエン」さんたちで、レシートにプリントされる店員さんの名前は時間帯により「グエン(ア)」だったり「グエン(イ)」だったりする。
先日は六本木の立ち食いそば屋さんで気がついたら、店員、お客を含めて、どうやら日本国籍の人は自分しかいない、なんてこともあった。
僕のもとで時々アルバイトをしてくれるフランス国籍の若者がいる。彼は幼いときに日本のファッションを知って大好きになり、高校のときから日本に留学して、今でも日本に住んでいる。日本に生まれた僕なんかよりもよほど日本のことが大好きだ。日本の高校で学んでいるので漢字も含めて日本語はバッチリで、ぼくなんかよりも語彙は多いかもしれない。
彼はこれからも日本に住んで日本で仕事していきたいと切望しているので、彼には日本の国籍を取得するように強く勧めた。
それは、ラグビー・ワールドカップのときのテレビ中継で外国生まれの日本代表選手を紹介するテロップにいちいち「日本国籍取得済」と表示されるのが気になって気になって仕方がなかったからだ。テレビの制作者というより、テレビの向こう側にいる多くの視聴者が、同じ外国生まれの日本代表選手でも、日本国籍を取得しているかどうかを気にする人が多いのだろうと思ったのだ。「この人は日本国籍を取得している、いい人」とか「この人は日本国籍を取得していない、いつこの国を離れるのかわからない、だから信用できない」というような気分なんじゃないだろうか。
ラグビー日本代表の外国人選手は帰化してるの?国籍を整理!【すぽいべ】
だから、「日本で仕事をしたい、ずっとこの国に住みたい、というのであれば日本国籍があったほうがはるかに自由度が高いぞ」と、私はと彼に勧めているのである。
日本国籍がないとその職につけない仕事はある。たとえば相撲の年寄名跡の襲名には日本国籍が必要だと決まっている。最近だと横綱白鵬が日本国籍を取得して年寄襲名の資格を得た。
あと、国家公務員。人事院規則8-18の第9条という規則で日本国籍を有しないものは採用試験を受けられないと規定されている。グレーなのが国家公務員とするべきか判断の分かれる国会議員。2016年には蓮舫議員の二重国籍問題が起こった。
こういう仕事に付きたい人は日本国籍が必要だ。決まりだからね。
でも、それ以外の人は、外国籍であってもきちんとした労働許可が出ていれば、日本で正式に働くことができる。それは、工場の仕事だろうがラグビー選手だろうが同じだ。僕らも、たとえアルバイトでも外国籍の人を雇うときには外国人登録証の裏の労働許可のありなしの部分をコピーさせてもらっておかないといけない。でも条件の範囲内なら、ちゃんと働いてもらえる。
でも、現実には求人に応募しに行っても、日本国籍がないとなかなか合格しないのだそうだ。これは困るよね。いくら応募者側が偏見だ、差別だ、と言っても、採用側が「もっと良い人がいたので」と断ってしまえば、抗弁のしようがない。
国籍差別が、ここには、間違いなく、あるんだよ。
最近驚いたのは、日本のアーティストに楽曲を提供しようとした外国籍の作曲家が、アーティスト本人はこの曲を欲しがっているのに「ASCAPやBMIのような、海外の著作権管理団体の会員の曲は我々は管理できない」と言ってプロデューサーが断ってきたのだそうだ。ASCAPやBMIにはどこの国籍の人でも入会できるから、国籍とは直接関係ないけど、ほとんどの人は出身国の徴収団体と契約するから、これは「私の音楽は日本人でないと作らせません」と言っているのにほぼ等しい。これは国籍の問題ではないけれど、こういう差別も、まちがいなく、ある。音楽の仕事をしている人の中には鎖国主義の人もいるようだ。