しばらく前から、自分がいつも行くお店が閉店していくのを見て、実店舗の重要性について考えていた。
今は、何でもオンラインで買える。
重くてかさばるものなんて、今さら実店舗で買おうなんて思わない。米や一升瓶のお酒やビールなんて、とても実店舗で買ってうんやこらせと自宅まで運ぶ気になんてならない。
期せずして、東京都内のお店がほとんど閉店してしまっている。新型コロナウイルスのせいだ。
私が週に一度か二度は行かないと具合が悪くなる書店も軒並み臨時休業している。
(三省堂書店有楽町店)
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/
電気屋さんも閉まっている。
http://www.yodobashi-akiba.com/event/0season/news/news_event.jpg
自宅で作業をするようになって電源タップが足りなくなり、近所のコンビニに見に行ったがすでに売り切れ。僕と同じような人が多いのかもしれないね。
「ヨドバシカメラだって休んでいるしなぁ」と思って検索したら、ビックカメラグループは時間短縮ながらも営業していることがわかった。
ビックカメラグループのコジマなら高島平にもお店がある。
https://www.kojima.net/shop/shoplist/takashimadaira.html
街を歩いてみると、パチンコ屋さんや飲み屋さんはもとより、多くのお店が閉まってしまっている。何年か前に考えた「このまま実店舗がなくなってしまったら、街はさびしくなるな」という僕の気持ちは、今回のことで一層強くなった。実際にお店がないんだもの、今。
ポスト禍が終結したらやりたいことや、やらないといけないなと思っていることはいくつもあるのだけれど、その中でも、ショップ・マーケティングは中心的な課題になってきた。
長野県松本市に住む父親が89歳を迎えた。まさか89歳まで生きると自分も僕ら家族も思っていなかった。長生きである。でも考えてみたら父の父、僕の祖父も100歳まで生きたのだから、家系が長生きなのかもしれない。
その父親から地元のコミュニティ紙「市民タイムス」の記事の切り抜きが送られてきた。オンラインにも同じ記事がある。
中山霊園の樹木墓地 松本市が生前受け付け開始へ 【市民タイムス】
https://www.shimintimes.co.jp/news/2020/02/post-8628.php
松本市役所が、中山霊園の合葬墓の一つである「樹木墓地」の生前受け付けを始める、という記事である。
父としては「菅原家の墓もあるのだがこれは関西。自分が移住して大好きな松本のお墓に入りたいのだが、昔ながらの墓標のあるお墓じゃなくて、合葬墓、しかもモニュメントみたいなものもない、樹木墓地に入りたいのだが、息子はどう思うか?」と聞いてきたのである。
松本市のウェブサイトに行ってみた。
中山霊園樹木式埋蔵場所 【松本市のウェブサイト】
https://www.city.matsumoto.nagano.jp/smph/kurasi/tetuduki/sibou/boti/basyo.html
ここの樹木墓地は、1本の墓標とみなすシンボルツリー(シダレ桜)の周辺に焼骨を1体ずつ埋蔵するのだそうだ。良いではないか。
中山霊園は、松本市の高台の見晴らしの良い場所である。しかも、父親が松本市に移住する大きなポイントだった「大好きな常念岳が見える」のである。
僕の父親の部屋の窓からは正面に常念岳が見え、その左肩にちょこっと槍ヶ岳のアタマの部分が見えるのである。
今年のSXSW (South by South West) が中止になった。コロナ・ウイルスの影響である。
SXSW Canceled as Austin Mayor Declares Local Disaster Over Coronavirus [Billboard]
SXSWは音楽、映画、IT、教育などをリードするアメリカ随一のイベントで、毎年3月にテキサス州オースティンで開かれる。世界の新人アーティストにとってはショーケースでアメリカ音楽産業の人たちに自分たちをアピールする機会だ。昨年2019年は、ブレイク直前だったBillie Eilish なども出演した。
https://schedule.sxsw.com/2019/artists/2011697
今年も、多くのアーティストが未来をかけてオースティンに向かう手はずを整えていたはずなので、とても残念である。
中止を発表する市長の姿も陰鬱なものだった。
オースティンの街はSXSW開催期間中は街の中心部の交通を遮断してイベントを実施するのだ。
住民としては交通の遮断なんて迷惑きわまりない。タクシーの運転手なんかはブゥブゥ言っているけれど、それでもこの街のコミュニティは、SXSWの成功を祈って協力しているのだ。
オースティンは、もともと単なる大学街だったのだそうだ。
1839年にテキサス共和国の首都が置かれ、現在はテキサス州の州都だ。1930年代にコロラド川の開発によって家具や煉瓦、食料品、製油、皮革などの工業が発展した。また、1940年代に軍事産業も成立した。
顕著な発展を支えているのがIT産業だ。産学連携の元、目覚ましい経済成長と人口増加を誇っている。郊外を含め、周辺は丘陵地が多いためシリコンバレーにあやかってシリコン・ヒルズと名乗っているのだが、この大きなきっかけはDellだ。テキサス大学オースティン校出身のマイケル・デルがこの地にDellの本社を置き、これが契機となった。現在はサムスン電子が全米最大の拠点としているほか、インテルやグーグルの開発拠点となっている。ナノテクノロジーやバイオテクノロジーなどIT以外の技術の集積を図っているのが最近の姿だ。
でも、街としてはこの街の知名度と好感度を上げるのにSXSWのようなイベントをとても重視していて、SXSW以外にも音楽フェスティバルの「オースティン・シティ・リミット」とF1の「アメリカ・グランプリ」を市として大きなバックアップをしているのだそうだ。
音楽産業に従事する者として今回のSXSWの中止はとても悲しいけれど、経済的にも街のイメージにも大きなダメージを与える今回の決定を勇断をもって下した市長以下の市の人々に大きな敬意を表明したい。
dennis_jp