学習には時間がかかる。
全部わかるようになるためにはもっと時間がかかる。
というか、それまでにきっと死んでしまう。
まして、原発はワタクシの専門ではない。
地震があって、津波が襲い、福島の原発で事故が起こってから急に恐怖にかられて少し学習しただけだ。
納得できるまで学習したのでは、一生アウトプットできなくなってしまうので、今日現在の学習の成果をまとめておくようにしよう。
今日、東京電力から「応急修理の段階から、収束への道筋」が発表されたことだし。


1.
原子力に関する学問というのは、相当高度に洗練されているようだ。
理数系の叡智を結集して、世界中のものすごく頭のいい人たちが考えに考え抜いて研究を行なっている。
根底には「原子力は危険なもの」という考え方があり、これは一貫しているようだ。


2.
ところが、実際の原発の設計施工は、そこまでは洗練されていないようだ。
とくに、東海村や福島など、日本に初期に導入された原発において。
日本においての蓄積がないため、アメリカの考え方をほぼそのまま導入したケースが多いようだ。
アメリカで考えられた設計には、地震対策はほとんどなく、そのための強度計算などは十分ではなかったようだ。日本人技術者がこれを修正したが、これでもまだ十分とは言えなかったようだ。
たとえば、震度7で直下型地震が起こった場合、縦揺れに対する計算が十分でないので、20センチ近い鉄板で作られた原子炉が壊れるよりも先に、これを支えている土台が崩れちゃったり、配管がギロチン切断を起こしてそこから放射物質がダダ漏れになる可能性があること。
また、施工に当たっても、日本には原発施工の経験者がいなかったため、試行錯誤しながら経験を積んでいくしかなかったようだ。試行錯誤の途中では当然失敗もあったわけだが、これに関してはみんな口を閉ざしているのだ、という説もある。


3.
日本に「原子力の平和利用」を持ち込んだのには、日米の政治的な動きがあったようだ。
第二次世界大戦で広島と長崎に原爆を落とされ、戦後もビキニ環礁で第五福竜丸が被曝しているこの国に、わざわざ原子力を持ち込む必要はなかったのだが、昭和30年代、40年代の冷戦期においては、どうしてもこの国に原子力を持ち込まないといけない理由があったようだ。
この政治的な動きのウラには、原子力によって巨額の利益を得ることのできる人たちがいたのだろうな、というのは僕の今現在の想像である。


4.
今回の事故に関して東京電力への批判が強いが、電力会社からすると「国策に従っただけ」という意識がどこかにあるのではないか、と思われるフシがある。
電気事業法で規制されている電力会社は、電気料金も国の認可を受けないといけない。監督官庁の言うことであれば、聞かなくてはいけない。
「原子力の平和利用」が国策であれば、それに従うしかななかった。
オイルショックの際には、「石油などの化石燃料に頼らない安定したエネルギー」を国策として要求され、いままた「クリーンエネルギー」を国策として要求されているので、それに対応しているだけだ、という意識である。
「自分から積極的に原子力を望んだわけではない」のである。
この意識は、古くからいる幹部ほど高いのではないか、と、私は想像している。
なので、「補償に当たっても、当然国が何とかしてくれるでしょう」と思っているのではないか。


5.
原発を作るにあっては、とにかく「国策」であるから、「作る」ことが優先であった。国からもらったお金をもらって原発を受け入れてくれる場所を探して、「とにかく作る」。これが優先事項だった。
できてしまったらできてしまったで、今度は閉鎖が大変困難なシロモノであるから「原子力の火を消さないこと」が優先事項となった、
だから、立地に多少の問題があっても目をつぶってきた。
場所を決める段階で見つかっていなかった断層があとから発見されても、これを気にしていると「原子力の火を消す」ことになるので、無視した。
中部電力の浜岡原発や、四国電力の伊方原発がこれである。


6.
電力会社を監督しているのは経済産業省である。
監督するのは当然官僚である。原子力のプロではない。
三年か五年、その部署で大過なく過ごせばいいのである。電力会社で何かトラブルが起これば自分の責任になるので、もみ消せるトラブルであればもみ消してきたのではないかと想像するが、確証は、まだない。


7.
日本は地震国である。まして、日本地域における地震の活動は活発期に入ったと言う学者もいる。物理的に、この国に原発があるのは危なくってしかたがない、という考えが出てきて当然、なようだ。
まして、これを監督する組織が無責任極まりないのであれば、余計に危ない、ということも言えるかもしれない。


8.
日本の原発は、これら「反・原発」の流れの中で、今後の増設はもとより、既存の施設の運転継続もむずかしくなるのではないか、と予想される。


9.
いまただちに日本の原発全部が運転を止めても、ただちに日本の活動が全部止まるわけではない。
しかし、経済活動が鈍るのはまちがいない。
日本の製品を嫌う人々は世界中に渦巻いていくことだろう。だから、「放射性物質汚染まみれイメージの日本製品」は売れない。
この上で、日本企業がどういう振る舞いをしていくかが、問題だ。


また、いつか、追加で書くかもしれないけれど、今日はここまで。