アポロ13号 奇跡の生還 (新潮文庫)
ヘンリー・クーパーjr著/立花隆訳
アポロ13号 奇跡の生還 (新潮文庫)


今、日本の原発で起きている事故。いつになったら収束するのかまったく先が見えない。
余震が続いているとはいえ、311の大地震による影響は落ち着いたと思えるが、原発の事故は、この先何ヶ月、いや何年、日本という国全体の経済に影響を及ぼしつづけるのだろうか。


この事故で改めて浮きぼりにされたのは、日本という国というか日本文化におけるクライシス・マネジメントとプロジェクト・マネジメントの意識の欠如だ。これらの問題はずいぶん前から指摘されてはいたが、一向に改善される気配はなかった。


アポロ13号は、今から40年以上前の1970年4月、尽きに向かう途中で事故を起こし、水や酸素、エネルギーがなくなっていく、という事態の中、地球への奇跡的な帰還を果たす。これをレポートしたのがこの本『アポロ13号 奇跡の生還』である。


アポロ計画は、大きなプロジェクトだった。今回の日本の原発事故対策も大きなプロジェクトである。国家の威信にかけて、という意味では変わらない。
この本の出てくるアポロ計画の実行者たち、とくに36歳のフライト・ディレクターのユージン・クランツには、クライシス・マネジメントとプロジェクト・マネジメントの意識が満ち溢れている。ひとことで言うと、リーダーシップである。
日本のもつ技術力は世界最高のレベルなのだとよく聞く。しかし、クライシス・マネジメントとプロジェクト・マネジメントの意識は本当にないもんだな、と痛感する。
NASAは米軍の一組織であったから、たとえば宇宙飛行士なども海軍将校だったりした。NASAの運営には、どこか軍の気配を感じさせる。翻って、日本は結局軍もダメだったのだと指摘される。そもそも日本人は、危機には弱いのか? それじゃ、いかんだろう。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 01月号 [雑誌]
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 01月号 [雑誌]
(特集 日本軍 戦略なき組織)

今回の危機はいつまでつづくか、まだわからない。
そしてこの先もまた危機はやってくる。
なんとか、自分たちでクライシス・マネジメントとプロジェクト・マネジメントの力をつけていかないと、本当にダメだ、と思った。