雨。
台風12号の影響。
雨は断続的に降っただけで、国立には大した影響はなかった。
先月のウェブ研のセミナーで紹介した本に関してのお問合せが何件かあるので、ここでまとめておこう。

トーマス・H・ダベンポートほか著/村井章子訳
分析力を駆使する企業 発展の五段階
日経BP社、2011
もとアクセンチュアで著書『アテンション!』でアテンション・エコノミーを語り、現在バブソン大学の情報技術・経営学教授兼国際分析研究所(IIA)リサーチ・ディレクターのトーマス・ダベンポートと、アクセンチュア・ハイパフォーマンス研究所(シカゴ)のエグゼクティブ・リサーチ・フェロー兼シニアエグゼクティブ、ジェーン・G・ハリスなどの共著による本。
装丁は一見、統計や数字の扱い方を書いた本に思えるかもしれないが、実は経営意思決定に関する本。実にわかりやすい。
ウェブサイトのアクセス解析に関して、私は長く取り組んできたが、すごく悲しかったことがある。せっかく解析を行っても、解析をしたというだけで満足してしまい、数字を見て「ふーん」等と言うだけで、何も行動を起こさないマネージャーがとても多かったことだ。この本では、私がかつて思っていたこの不満を解消する方法を提示してくれている。
著者たちは、「分析力を武器にする」企業を5つのレベルに分けているが、『私たちは、あらゆる企業が「分析力を武器にする」企業になるべきだとか、なった方がよいと言うつもりはない。だがほとんどの企業はもうすこし分析的になったほうがよいと思うし、願わくは一つか二つは階段を上がってほしい』と語っている。
分析を生かし、ファクト・ベースで意思決定していくことが企業にとってますます重要になってきているし、最近のITは、それを供給してくれる、という話だ。
分析でできることは
・変化の激しい時期や困難な時期に事業の舵取りを助ける
・成功の要因を明らかにする
・新しい発見、効率的な実行、価値の拡大を実現できる
・コスト削減と効率改善を実現する
・リスク・マネジメントに寄与する
・市場の変化を予測する
・意思決定の質を高める
である。(P17)
また、分析で答えられる質問を以下の表にまとめた6つだとしている。
分析に重要な事項を5つにまとめ、「DELTA」と名付けている。
D:データ。分析には、質の高いアクセス可能なデータが必要
E:エンタープライズ。組織を挙げての取り組みが必要
L:リーダーシップ。分析の知識を備えたリーダーが必要
T:ターゲット。分析対象を戦略的に絞り込むことが必要
A:アナリスト。分析のできる人材が必要
この本ではこの「D」「E」「L」「T」「A」一つに一章ずつを割いて、詳細に語っている。
特におもしろかったのは、「アマチュア・アナリスト」として、俳優、ウィル・スミスの例を上げているところだ。(P175)
ウィル・スミスとマネージャの月曜日の習慣は、週末の興行成績のチェックだ。この習慣は、二人で最初の出演作を決めた時からずっと続くことだ。彼らは、「俳優は、人気作に出ていることが重要だ」と考えている。そのため、興行成績をいつも分析して、映画を見る人達の傾向をつかみ、次作の出演をどの作品にするのかを決めていく。自分が出演している映画の成績が振るわないときには、スケジュールを変更して海外でのキャンペーンにより多くの時間を使い、その映画が失敗しないようにする。彼は、ラップ・アーティスト、テレビ・シリーズ出演で成功を収めた後、1992年には「ハートブレイク・タウン」で端役ながらスクリーン・デビューをしたのだが、このデビュー作を決めるときのエピソードはおもしろい。当時の彼らの分析によると10のうち10、つまりヒット作は全部が全部、特殊効果を使っていること。10のうち9は、人間も含めて生き物に特殊効果を使っていること。10のうち8は、特殊効果を使ったうえにラブストーリーであった。これにハマる作品を選んだのだという。
著者は、米国企業の重要な決定の40%は、マネジャーの直感(日本でいうと、勘や経験、度胸=KKD)だけで下されている、と言う。十分な情報・データ分析が行われていなければ、ますます幸運に頼ることになり、成功の確率、その程度はどうしても低くなりがちになる。
また、長年の経験則から、「この値がこれ以下になったらこうする」というルールのようなものもできているが、もしそうなら自動化してもかまわない。マネジメントには、もっともっと判断するべきことがいっぱいある。
意思決定をファクト・ベースで行っていくこと。移り変わりが速く、的確な対応を瞬時に求められるこれからの時代には、これは大変重要なことだ。そのために、「組織」がなすべきことを、この本は教えてくれる。