雨。
一雨ごとに冬に向かっていく。

20131107


私が会社で担当しているのは、マーケティング部署に使っていただきたいソフトウエアなんだけれど、同じもので、同じ利用法なんだけど、生産計画部署に「生産・販売計画ツール」として提案すると買ってもらえる例があった。


「ビッグデータ」ネタでお話していると、大変良く出てくるのがブルドーザーやパワーショベルなどの建機を製造販売しているコマツの話である。「国内ビッグデータ成功事例」である。
(以下は、いろんな本に出ているのをまとめました。情報が古くて、現在と異なるようでしたら教えて下さい。)


コマツは2001年、「コムトラックス」と呼ぶ遠隔管理システムを建機に標準搭載した。これは、当初はGPSを利用して、盗難を防止する目的だったそうである。しかし、いまや作業中の建機の位置や稼働時間をリアルタイムでつかんでいる。導入実績は70カ国以上で、累計約30万台以上に達したのだそうである。

20131107_Komtrax
http://www.komatsu.co.jp/CompanyInfo/press/2009100115553404076.html


このシステムを利用して、コマツは自社しか持たない建機の稼働場所と稼働時間データに、販売先の各国のマクロ経済指標とか気候データ、経済ニュースも合わせて、生産・販売計画を立てているのだそうである。理想は「翌日の生産計画に反映」させることで、現状でも「この分だと中国用の生産は控えたほうがよさそうだ」とか「オーストラリア向けは増産」という程度の内容は生産・販売計画にすでに反映されているのだそうである。
建機は、世界的にもメーカー数が少なく、寡占体制だからできることだ。建機の場合、コマツの他にキャタピラーとか日立建機など、競合社が少ないので、マークすべき競合社の数も少ない。マクロ経済がいくら良くても営業が弱くてバンバン他社に取られるならこんな計画は意味もないが、「これを予想してすでに生産済みなので、即納できます」というのがセールスマンのキラー・ワードだそうで、実際の売れ行きにも好影響を与えているのだそうである。


ユーザー側もコマツにデータをただ取られるだけでは納得しないが、どんな奥地や不便な場所で稼働させていても「コムトラックス」のお陰でメンテナンスが受けられる、というメリットがある。建機に取り付けられたセンサーで、故障を察知してパーツが届いたり、サービスマンが現場に派遣されたりする。もし多少割高であっても、奥地でパーツが届くまで何日間も作業を止めるよりもはるかに生産的だ。


実はこの一環でソーシャル・メディア対策もしている。Nikeなどのランニング・シューズ・メーカーは、毎日の自分のランニング・データを投稿できるアプリを無料配布している。これと同じように、一台一台の建機の運転のしかたや燃費動向をFacebookに投稿できるしくみ。もちろんデータは「コムトラックス」のセンサー・データだ。

「今日は20トンの巨岩取ったどー」(写真)(位置表示)(建機の運転データ)みたいな感じ。

こういう例を知っている人に、「マーケティング用」として売っているものを「生産・販売計画用」として持って行くと売れたのである。
会計とか、生産とか、早くからシステム化している部署には情報システム予算がある。同じ内容でも「生産・販売計画用」となると、理解される。なので、売れる。
ところが、これが「マーケティング用」とラベルがついた瞬間に売れなくなる。マーケティング部署は、予算もないし、システム化になんとなく抵抗があるからだ。
これを実際に販売したのは、私の会社のラテン・アメリカのセールスマンだった。彼には「マーケティング」というアイデアは全くなく、会社から与えられた商品を自分なりに解釈したら「生産・販売計画用」となり、ネットで調べたらコマツの例がいっぱい出てきたけれど日本語の資料は自分では読めないので私に助けを求めてきたのであった。


私も、いつもの商品に「生産・販売計画用」とラベルを貼ってどこかに持って行こうかしら、と思った。