20140728

かつて、テレビ・コマーシャルは、全国規模で放送する前にどこかの地方を選び、テストを行うことが流行したことがあった。
日本の場合は静岡県や広島県が選ばれることが多かった。都市と農村の分布や年齢別の人口分布などが全国の縮図になっていたことや、地域メディアが充実していて、その地域のみにコマーシャルを流すことができたからである。たとえば奈良県でテストをしようにも奈良県だけではなくて関西地区全域で流れてしまうので、テストにならないからである。
放送を開始すると、店頭での売行きをチェックするのはもちろん、調査会社に依頼して好感度や認知度をチェックしたのである。
ただちに大規模な費用をかけて全国規模のプロモーションを行うよりは、1つの地域で失敗したほうがましだ、という理屈である。


最近は、このテスト・マーケティングはウェブ・サイトで行うのが合理的だ。
オバマ大統領が前回の選挙で用いた「A/Bテスト」である。
これを解説した本がなかなかおもしろい。



『部長、その勘はズレてます!』というタイトルがいい。原題は『A/B TESTING : The Most Powerful Way To Turn Clicks Into Customers』だから、原題よりも全然いい。編集者の勝利か?


ただ、A/Bテストは時間がかかる。
コピー案ABC3案、
色味の案ABC3案、
レイアウトの案ABC3案
をテストするには、まずコピー3案のテストを行い、このチャンピオンを使って色味のテスト、さらにそのチャンピオンを使ってレイアウトのテストを行うことになる。それぞれに1週間を要すのだとすると、合計3週間もかかってしまい、ちょっとしたキャンペーンなんか終わってしまう。
また、各項目のチャンピオンを掛けあわせるので、チャンピオン×チャンピオン×チャンピオン、の結果しか出せない。でも実はコピー単体のテストでは2位しか取れなかったものと色味の3位を掛けあわせたもののほうが効果を得られることがありそうなことは想像がつくだろう。
スポーツのチームでも、最高のプレイヤーだけを集めてチームを組んでも必ずしも勝てないように。


こんな時には多変量テストである。
コピー案ABC3案、
色味の案ABC3案、
レイアウトの案ABC3案
この3×3×3=27通りを出し分けてテストする方法である。
これなら、コピー単体、色味単体、レイアウト単体でテストするよりも効果的である。


スピードと成果を求められる現代のマーケティングは、つねにテストをしながら本番を回していく、という時代になった。