俳優と歌手の両方で成功するのは、大変むずかしい。
それぞれに求められる要件が違うからだ。


優秀な歌手は、1秒聞いただけで「この人だ」とわかることを要求される。パッとミック・ジャガーだとわかること。そしてこの声を通じて伝えられるメッセージ、つまり歌詞の中身が聞く者にとってリアリティのあるものであることが要求される。
それに対し、俳優には「誰にでもなれる」ことが要求される。ある映画では凶悪犯、ある映画ではやさしいパパ。俳優に求められるのは融通がきくことだ。

20140728_Fukuyama

そういう意味では、日本の福山雅治という人は大したものだな、と思う。俳優として、ある時はガリレオ湯川准教授を演じ、ドラマや映画を通したリアリティを人々に与えているのに、それとは全然異なるキャラクターの歌を歌っていて、こちらでも「いかにも福山雅治が歌いそうなこと」という、リアリティを与えている。こういう人は、なかなかいない。


スタッフにとって大事なのは、いい人と巡りあうこと。
こういう複数の才能を両立させる人と巡りあうということ。もう、これは運だね。育成を頑張っても、この二律背反した要求に応えられる人はなかなかいない。
私にも、運がほしい。
どこかで売っていたら買いたいくらいである。