「景気が良くなったな」と思うのは、趣味や旅行にお金や時間をかける人が増えてきた時だ。私の同世代の「かつてのロック・マニア」や「かつてのオーディオ・マニア」の人の間ではハイ・レゾリューション・オーディオが流行り始めている。


ハイ・レゾリューション・オーディオは「ハイレゾ音源」を再生することだ。
「ハイレゾ音源」とは、音楽用CDを超える音質の音楽データの総称だ。従来の音楽用CDのサンプリング周波数・量子化ビット数(44.1kHz・16bit)を上回る、48kHzとか96kHzで24bit以上の音楽データを指し、CDとくらべて情報量が格段に大きい音源の事を言う。先週ビクターエンタテインメントのト「VICTOR STUDIO HD-Music.」 http://hd-music.info/ がサービスを開始したが、ソニーの運営する「mora」 http://mora.jp/index_hires とかオンキョーエンターテイメントテクノロジーの「e-onkyo.com‎」 http://www.e-onkyo.com/music/ などのコンテンツ配信サービスで音楽データを入手し、パソコンからUSB DACなどを通じてオーディオ機器に出力して再生する。


しくみを図示するとこうなる。
20140921_HiResoMora
http://mora.jp/etc/highreso


ハイレゾ音源のメリットは、高音が記録できること。しかも、人間の耳では聞こえない帯域の高音が。


サンプリング周波数」とは、音声等のアナログ波形を、デジタルデータにするために必要な処理である標本化(サンプリング)で、単位時間あたりに標本を採る頻度である。ある波形を正しく標本化するには、波形の持つ周波数成分の帯域幅の2倍より高い周波数で標本化する必要がある(サンプリング定理)。したがって、CDの規格であるサンプリング周波数44.1kHzでは、22.05kHz以上の高い音を正しく標本化することはできない。また、そこで、CDのようにサンプリング周波数が44.1kHzだと、20kHzまで記録するためには、20kHzから22.05kHzにかけて急激にカットするフィルタを通さなければならない。このフィルタが急峻であるほど、別のノイズの原因となる(位相歪み)。


また、「量子化ビット数」とは、アナログ信号からデジタル信号に変換する(AD変換)際に、信号を何段階の数値で表現するかを示す値。この値が高いほど、元の信号に忠実なデータが得られるが、データ量はその分増大する。16bitであれば2の16乗倍までのスケール、65536段階で、24bitだと2の24乗倍である16,777,216段階にもなるので、もとのアナログ信号に対する忠実度が高まることになるというものだ。


CDの仕様を決めるときに、大規模なテストが行われた。
この結果、「14kHz 以上をカットしても有意差が認められない」という結果を得た。このテストのことは大橋力著「音と文明」に詳しいので、興味のある方はどうぞ。高い本だけれど。







音のいいハイ・レゾリューション・オーディオだが、普通に音楽を聞いている際にはこの違いはわからないだろうと思う。
でも、データ量が飛躍的に増えるので、コンピュータによる処理が巨大なものとなるので、使用する機材にはものすごくお金がかかる。
このコストは、今の音楽業界の構造では回収できないくらい大きい。
私は今自分で制作する音源に、ここまでのコストをかける必然性を感じないから、やらない。


リスナー側の立場で言うと、イヤホンやヘッドホン、安いスピーカーでしか音楽を聞かないのなら、全然必要ない。音の出口が20kHz以下しか再生できない機器なら、全く無意味だからだ。
逆に、クラブDJなどの仕事をしていて、でっかいスピーカーで大音量を聞かせるのなら、ハイレゾにトライした方がいい。EDMなどのデジタル音源の音楽は個々の音源はフィルターで切られて20kHzまでしかない音ばかりだけれど、複数の音源が合わさるとこれが共鳴して高音域で感動的な事が起こるかもしれない。
また、アナログ時代に録音された音源を中心に聞くクラシックや20世紀のロックが好きな人で、ものすごく高いスピーカーを買えるお金持ちも買うといい。経済が活性化するし、心が豊かになる。「え、レッド・ツェッペリンってこういうフレーズが入っていたの?」という驚きがあるかもしれない。