テレビのニュースを見ていたら、ロシアがシリアに空爆をしているのだという。
しかも、この空爆はカスピ海に浮かんだミサイル艦船から行っているのだという。
カスピ海に展開する4隻の艦船から26発の巡航ミサイル「カリブル」が発射され、およそ1,500キロメートル離れたシリア国内のISやヌスラ戦線などの11の施設を破壊したとしている。

20151008CaspianSea_Siria

「カスピ海って、シリアに近くないよな」と思って検索してみたら、ロシアの国営メディア「RT(ロシア・トゥデイ)」のニュース映像をみつけた。



RTは2005年12月10日に開局したロシア政府が所有する実質的な国営メディアで、アメリカでBBCニュースに次いで2番目の視聴者を持つ外国ニュースチャンネルであるからインチキ映像ではないと思われる。
カスピ海からシリアまでは1,500kmもある。
艦船から発射されたミサイルは、直線的に飛ぶのではない。高度なナビゲーション・システムにより複雑なルートをたどり、シリアでの軍事作戦で協力するイランとイラクの上空を通過して正確に標的に向かって飛んで行く。

20151008Navigation01

20151008Navigation02

20151008Navigation03

空爆というと、爆撃機が目標上空まで行ってバラバラと爆弾を投下するようなイメージだったが、今ではミサイルを使うので、わざわざ目的地上空に大きな爆撃機が飛んで行く必要が無い。ベトナム戦争の時には、アメリカ軍にはベトナム周辺に手頃な基地がなかったので、アメリカ軍のB52は沖縄の嘉手納からベトナムまで2,300Kmをえっちらおっちら飛行して爆撃したのだが、今ではこんな事をしなくても良い。
戦争というと、陸上で兵隊同士が撃ちあったり、海上で艦船同士が砲撃しあうイメージがあるかもしれない。現実に日本の安全保障法制の議論でもこんな話が多かったように思う。でも、もはやそんな時代ではない。

宇宙の人工衛星や無人の偵察機で上空から見えるものは撮影する。
撮影できないものは通信を傍受して、電話だろうが無線通信だろうがeメールだろうがクラウド・システムだろうがハックして情報を捉える。この中には、当然センサー情報も含まれている。
インターネットの仕事をしているとIoTなどに注目してしまうが、軍事技術はこんなもんではないのだ。本当にトップの技術者はインターネットになんかいない。軍にいるのである。いまだに。

最高峰の技術は必要性とお金のあるところに発し、お金のあるところに徐々に広がっていく。
軍→金融→医療……という感じである。マーケティングなんて、ずっと後の方である。
いま、軍で使われている技術はいずれマーケティングの世界にも降りてくる。
現在の軍事技術をつかんでおけば、マーケティング・テクノロジーの将来も見えてしまうのだ。
もうすこし、軍事技術にも注目しておいたほうが良いかもしれない。