どういう物なら売れるか理詰めでわかっていれば、確実に物は売れる。
どうすれば人は笑うのかと理詰めでわかっていれば、お笑いスターとして成功する。
どういう歌を歌えば受けるのかが理詰めでわかっていれば、歌手として成功する。

ところが、この「どういう物」というのが日々刻々と変化するので、このトレンドを瞬間瞬間で掴んで「どういう物」をどんどん変化させていくというのがデータ・ドリブン・マーケティングの基本的な考え方だ。

このためには、
●物事は変化するのだ、という基本的な気持ちを持っている
●成功を予測するためには失敗が必要だということを理解している
●観測された結果から予想される取るべき対応をすぐに実行できるチカラが必要である
逆にうまくいかないのは
●何かをスタートさせるのには事前に十分計画しなければならない
●失敗は許されない
●一度計画したら、そう簡単には方針は変更しない
というようなマインド・セットが深く浸透しているような場合。こういう企業文化だと、データを使ったマーケティングはうまくいかない。

ユニクロを運営するファーストリテイリングの株価が決算発表を受けて急落した。2015年8月期の連結業績は、売上高、利益ともに過去最高で、売上高は前期比21.6%増の1兆6,817億円、営業利益は26.1%増の1,644億円、純利益は47.6%増の1,100億円となったにもかかわらずである。

20151009FirstRetaiking

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、決算会見の席上、
「マストレンド、いわば世の中の変化、ファッションの変化を捉えられなかった。変化に対する注意力が足りず、生産の量やコレクションの幅も少なかった。その結果、ほとんどすべてのコア商品で欠品が起きた。ショートパンツやTシャツ、ポロシャツ…。そういった夏の商品で最後のフォローができていなかった」
と述べている。
こういうこともあってか、ファーストリテイリングはさる2015年6月15日にアクセンチュアとビッグデータ活用の新会社を発足させると発表した。
世界約3,000店の店舗やネット通販の顧客データから売れ筋の変化などを綿密に予測する。また、2020年にも客が好みの柄や素材を選んで自分だけの商品を注文できるようにするのだそうである。一律の商品を大量販売する従来手法を見直して、ZARAとかH&Mといった海外勢を追い上げるのだそうである。

私は、株価が下がってしまったのは短期的には残念だけれど、このような経営姿勢は素晴らしいと思う。
サントリーのソフト・ドリンクが相次いで新発売早々欠品した問題や、今回のファーストリテイリングの問題のような、失敗が新たな展開を生むのである。
変化の激しい時代、失敗を機に、どんどんジャンプしていかないといけない、と思う。

データ・ドリブン・マーケティングとは、攻めのマーケティングではない。守りのマーケティングである。世の中の変化を敏感に察知してこれに順応していくマーケティングである。「順応」であるから、トリガーは外部である。データ・ドリブン・マーケティングでは、新しいマーケットを創っていくことはできない。
新しいマーケットは、プロダクト・アウトで、自分たちがいいと思うものをまずはマーケットにドカンと投入し、これに対する評価や反応、実際の購買行動を計測して、変化が起きたマーケットに順応していくことによって強固なものとなっていく。
攻めのマーケティングと守りのマーケティングを両立させること、そのためには失敗を恐れてはいけないのだ、というのが、最近の変化の激しい時代のマーケティングであろう。