ソニー・ミュージックのCEOが、映画業界では当たり前の「Windowing」を音楽業界にも持ち込むことが重要だ、と語った記事がある。
SONY'S LYNTON SEES WINDOWED FUTURE, SENDS FAXES

http://hitsdailydouble.com/news&id=299836
「Windowing」とは、時期に応じてメディアの露出を制限して、順々にマネタイズしていく方法のことである。
映画でいえば
・劇場公開・機内上映・ペイ・パー・ビュー・HBOなどの有料映画チャンネル・インターネット公開・テレビでの公開
と、時期をずらして少しずつマネタイズしていく方法である。
音楽では
・ラジオ、テレビでのプロモーション・CD・ダウンロード・ストリーミング
というタイミングをずらしていくのである。

http://www.strategy-business.com/article/22606?gko=edce5
このことは、Appleが音楽のデジタル・ダウンロードを始めた10年以上前から言われてきた。
ここに掲載した図も2001年のものである。
しかし、なかなか実行に移れなかった。
このWindowingで成功したのがソニー・ミュージックに所属するアデルであった。アデルはアルバム「25」のストリーミングをシングル曲を除いて拒否した。しかし、ラジオでのオンエアは許可した。だから、インターネット・ラジオのPandoraではシングル曲以外の曲を聞くこともできたが、SpotifyやApple Musicでは聞くことができなかった。
これが、レコード・レーベルにとっては売上も利益も大きいCDの大きな売上につながったのだとも言われている。
同様に、テイラー・スウィフトはアルバム「1989」のApple Musicでの配信を当初拒否した。Apple Musicには入会当初3か月は利用者は無料となる期間があり、テイラー・スウィフトは「無料期間中の分配がないのなら、Apple Musicでのストリーミングを拒否する」としたところ、Apple側が分配を明言したので、Appleの希望通りストリーミングされた、ということがあった。
しかし、アデルはもっと強く拒否し、ストリーミングはCDを売るためのプロモーション手段と割りきり、ここからの売上はアルバムを発売したばかりの段階では拒否したのである。
音楽業界は、フリーミアム・モデルの先駆者であるとも言える。発売する音楽をテレビやラジオで無料でどんどん聞かせてCDを買ってもらう、ということをず〜っとやってきている。
CDという核があり、これを売るのが商売だったから、それ以外の音楽の演奏に関しては「プロモーション」という名の下、寛容だった。だから、着うたの使用料も、有線放送での使用料も、ストリーミングの使用料も、決定の際には「プロモーション」ということで、安く設定していた。いわば「余録」である。
しかし、これからはまちがいなくCDの売上では食っていけない。そうなると、ストリーミングはもはやプロモーションとはいえない。
アデルの場合は、CDの売上を中心とした、20世紀型のモデルに戻してたまたまうまくいった例である。アーティストや曲の魅力、クリスマス・プレゼントという「実物」が必要な時期の発売、など、特殊な要因が重なってたまたまうまくいっただけである。
これから音楽の世界も「Windowing」を取り入れるのなら、ストリーミングを中心に考える必要がある。しかし、ストリーミングの料率は「CDのプロモーション」として決められた時のままだ。
この問題が解決して、ストリーミングだけでもそこそこアーティストが食っていけるようにならないと、Windowingは難しい。
小手先のことよりも、音楽ビジネスの構造をどのようにしていくのか、そのために何年も前に締結した契約条件を白紙にしていく努力が必要である。