「オランダに会社を作ってEU域内を対象にしたビジネスをしたいが、誰かそういうコーディネーションをしてくれる人を知らないか? 最初は英語の通じるイギリスにしようと思っていたがEU離脱だと言うのでオランダにしようと思って」という相談がFacebookで回ってきた。
そういう人は知らないので反応はしなかったのだが、このときに「Kanda News Network」の神田さんがエストニアの電子市民になったのを思い出した。


バルト三国の一つ、旧ソ連の小国エストニアでは、「e-Residency」というサービスを2014年12月から行っている。
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https://e-estonia.com/e-residents/about/
エストニアへの滞在許可がない外国人に電子上のエストニア国民資格を与えIDカードを発行することによって、エストニアのサービスを世界各国どこからでも受けられるようにするものだ。

20160914_e=Residency

「e-Residency」では、どこの国民でも100ユーロの手数料を支払えば誰もが資格を取得でき、デジタル方式で書類と契約にサインすればエストニア政府の規制の下にインターネットだけで会社を設立して、運営できる。
新会社設立の銀行口座を作る際には、IDカードをエストニアの銀行に直接持って行く必要がある。このときに最低一度はエストニアに行くことになる。でも、いったん銀行口座が開設できれば、ネット・バンキングを使って世界のどこからでも口座を管理できる。
また、エストニアでは個人の所得は課税されるのだが、事業所得は課税されないため、すべての事業所得を再投資に使うことができる。

エストニア政府はこれを積極的にすすめていて、2025年にはe-Residencyの国民が1000万人を越えるのが目標なのだそうだ。

エストニアはEU加盟国であるから、域内のビジネスは普通に行なえる。
EU域外の国民で、EUでビジネスを行ないたい人にとってはこういう方法もある。
今回、Facebookで相談している人は東京からの直行便がどうしても必要な商売らしいのでこれは使えないが。
 
この方法は、人口たった130万人の小国の国家経営の手法で、デジタル技術を活用した先端的な方法である。
事業所得は課税されないといっても個人所得は課税されるのであるから、商売がうまくいって自分の所得を取ろうと思えばエストニアに納税することになる。エストニアの現地で人を雇うこともあるかもしれない。
こういう柔軟な国家経営をしている国もあるのだ。
すばらしいね。