「日本のレコード産業がどのくらいガラパゴスなのか?」を説明するのに、ずいぶん前に作成したグラフをご紹介する。

まず最初に、日本は世界第2のレコード・マーケットである。

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出典:IFPI(国際レコード産業連盟) http://www.ifpi.org/global-statistics.php

中国は毎年60%ずつ伸びているのでいずれレコード・マーケットでも大きくなるとは思うが、まだまだ小さい。
上位を占めているのはアメリカ合衆国とドイツやイギリス、フランスなどの西ヨーロッパの国である。
このグラフを見るとわかるように、アメリカ合衆国のマーケットは他国に比べて大きく、日本の2倍近く、ドイツの3倍以上ある。世界のレコード産業は「アメリカと、その他の国たち」で成り立っている。
レコード産業の産業としての伸びは大変小さく、もはや「日本だけ」「インドだけ」のマーケットでは小さくなってきており、ここ数年で言うと、いかにアメリカで売るか、が焦点となる。
メジャー・レコード各社は先を見てアフリカや中国への投資をスタートしているが、これらが大きな売上を占めるのは相当先のことになるだろう。
日本のレコード産業が、ほぼ邦楽のアーティストだけで商売が成り立っているのは、このマーケットの大きさからだ。マーケット・サイズが韓国のように小さいと、自国出身のアーティストだけではビジネスが成り立たなくなるからだ。
韓国のアーティストは韓国だけではとても食ってはいけないので、ワールドワイドに活動しようとする。日本に軸足をおいているアーティストもいるし、中国中心のアーティストもいるし、マカオで頑張っているアーティストもいる。もちろんアメリカにもいる。2ne1などだ。彼らは、日本で活動するK-Popアーティストがそこそこ日本語ができるようになっているのと同じように、中国に行ったら中国語、アメリカなら英語でのコミュニケーションができるように訓練されている。


さて、レコード産業の売上を内容ごとの明細で見ると、ここでいかに日本が特殊な国かということがわかる。

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出典:IFPI(国際レコード産業連盟) http://www.ifpi.org/global-statistics.php

2014年、世界全体のレコード産業の売上の
46%がCD
46%が音楽配信
6%が演奏権
2%がシンクロナイゼーション(日本語では「映画録音権」。音楽が映画やCMなどで使用されたときの収入)
であった。
ところが
2014年の日本は
78%がCD
17%が音楽配信
3%が演奏権
1%がシンクロナイゼーション
である。
世界最大のレコード・マーケットであるアメリカ合衆国では
26%がCD
71%が音楽配信
演奏権は0%
4%がシンクロナイゼーション
となっていて、構成比が全く違う。
アメリカの人は「音楽は当然、配信で聞くよね」と思っているのと、日本の人は「CD」という差なのだ。

このグラフを見ても分かる通り、ドイツやオーストリアもCDの比率が高い。
新興マーケットである中国では逆に87%が音楽配信でCDは12%しかない。

■まとめ
・世界の音楽マーケットのことを語るときは、売上比重の高いアメリカ合衆国中心に話がなされる
・そのアメリカでは音楽配信がメインとなっていて、CDの売上は僅かなので、あらゆるビジネス・トークは配信を中心になされる