イギリスに本部を置く音楽のデジタル・ライツ・エージェンシー「マーリン」のオフィスが日本にできた。

邦楽ネット配信拡大へ 「第4のメジャー」が上陸【朝日新聞】
2016年10月10日
20161010Merline_Asahi
http://www.asahi.com/articles/ASJB77SCFJB7UCVL02M.html

イギリスの音楽業界メディアでも報道されている。

MERLIN OPENS JAPAN OFFICE IN TOKYO, HEADED BY HAJI TANIGUCHI [Music Business Worldwide]
2016年10月10日
20161010_MusicBusinessWorldwide
http://www.musicbusinessworldwide.com/merlin-opens-japan-office-tokyo-headed-haji-taniguchi/

マーリンジャパンのゼネラル・マネージャーには、ソニー・ミュージックとエイベックスで長く音楽の権利ビジネスを手がけてきた谷口 元さんが着任した。

日本でも音楽ストリーミング・サービス「Spotify」がスタートし、CDやレコード以外の、デジタルでの収益化が重要になっている。
YouTubeやApple Music、Spotifyなどのデジタル配信サービスに音源を提供する際に、3大メジャー・レーベルと比較して独立系レーベルは劣後の条件で契約されている現状がある。Apple Musicでメジャー・レーベルのアーティストが行っているキャンペーンは独立系レーベルでは実施できない、ということがよくある。このレーベルがメジャーと契約してメジャーの一角を占めるようになると急にこれが実現できるのである。
一方で、ストリーミング時代におけるメジャー・レーベルの存在意義も問われている。
最近の話題はフランク・オーシャンである。
フランク・オーシャンは2016年8月19日にビジュアル・アルバム『Endless』をApple Music限定で公開し、その翌日8月20日に17曲入りのフルアルバム『Blonde』をiTunesストアとApple Music限定でリリースした。
先にリリースされたビジュアル・アルバム『Endless』はフランク・オーシャンが所属してきたレーベルDef Jam/Universal Music Groupを通してリリースされ、これにてメジャーとの契約は完了。翌日発売のフル・アルバム『Blonde』は"Boys Don't Cry"というレーベルからリリースされており、これはビッグ・アーティスト側から「メジャー・レーベルなんて不要」と言われたのと同じことである。

CDを大量にプレスして販売していた時代には、この製造と流通に大きな資本が必要だったので、アーティスト自身がこれを行うなどということは、とても実現できないことだった。

マーリンは、世界中の独立系レーベルを取りまとめて配信業者と交渉し、3大メジャーに劣らない条件を引き出すことを目的に活動を行っている。
このような機関が機能すると、ますますメジャー・レーベルの存在価値はなくなっていく。

日本という音楽マーケットは、独立系レーベルの群雄割拠する場所である。EXILEなどが所属しているエーベックスも、AKB48などのキング・レコードも、サザン・オールスターズやSMAPなどが所属するビクターも、全部独立系レーベルである。YouTubeやApple、Spotifyが相手にする「メジャー」とは、ユニバーサル、ソニー、ワーナーの3社しかないのだから。

マーリンは会員制で、レーベルが会員となり、Spotifyなどからの売上の3%をマーリンに落とすしくみなのだという。現在、47カ国に780社の会員がいるのだという。
業界で信用の厚い谷口さんのことだから、多数の会員を日本でも集めることになるのだろう。
今後、この日本という音楽マーケットでマーリンジャパンがどんな役割を果たしていくのか、大変楽しみである。