昔からどうしても理解できない税金に「印紙税」がある。
その中でも特に理解不明なのは「取引基本契約書」とか「請負基本契約書」、「業務委託基本契約書(請負)」などの金額の記載のない契約書に貼り付ける4000円の収入印紙である。

20161022

契約書は重要である。仕事を請け負う時に、様々な条件を予め決めておいて、仕事が進行する際に問題にならないようにするために。

上記の「取引基本契約書」とか「請負基本契約書」、「業務委託基本契約書(請負)」などの書類は印紙税法では「7号文書」といっている。この文書は
1) 営業者の間における契約であること 
2) 売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負のいずれかの取引に関する契約であること
3) 2以上の取引を継続して行うための契約であること 
4) 2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のうちの1以上の事項を定める契約であること 
5) 電気又はガスの供給に関する契約でないこと
という条件を満たす必要があり、逆に言うとこういう契約書で金額が明記されていない「基本契約書」である限り、4000円の収入印紙を貼らなければいけないのである。

一方で「基本契約書」じゃなくて1件1件個別にプロジェクトのために契約を締結する時にはこの契約書には請負金額が記載されることになり「2号文書」と呼ばれる。記載された金額が100万円以下だと貼り付ける収入印紙は200円、100万円を超えて200万円以下なら印紙代は400円である。

今日送られてきた「業務委託基本契約書」は、50万円から70万円を数回請求して終わってしまう。その都度、金額入りの契約書を交わしてくれれば200円の収入印紙を数回買えば良いのだけれど、どうしてもこういう形式じゃないと法務部に通らないと言うので、しかたなく郵便局に4000円の収入印紙を買いに行ったのだった。

そもそも、この印紙税というものは、なぜ支払わなくてはならないのか?
会社の登記とか運転免許証を発行してもらう時などに役所への手数料として払うというのならわかる。または、契約が不履行だった場合、直ちに国が面倒見てくれるならわかる。でも、国がそんなことをしてくれるわけではない。

アダム・スミスは『国富論』の中で、「印紙税や登記税による課税方法は、ごく近代に発明されたものである。とはいえ、わずか一世紀たつかたたぬうちに、印紙税はヨーロッパのいたるところに普及し、登記税もきわめてありふれたものになった。人民のポケットから金をはきださせてしまう術くらい、ある政府が他の政府からいちはやく学びとるものはないのである」と書いている。

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)
アダム・スミス
日本経済新聞社出版局
2007-03-24


国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究 (下)
アダム・スミス
日本経済新聞社出版局
2007-03-24


消費税はよく問題になるけれど、この印紙税の件で文句を言っている人はあまり見たことがない。アダム・スミスが言うように、人民のポケットからはきださせる術にハマってしまっているのだろうか?