日米首脳会談が終わり、共同宣言が出された。

日米首脳会談の共同声明全文
2017年2月12日
読売新聞

この共同宣言の冒頭に非常に重要なことが書いてある。
 
「揺らぐことのない日米同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄及び自由の礎である。核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメント(関与)は揺るぎない。アジア太平洋地域において厳しさを増す安全保障環境の中で、米国は地域におけるプレゼンス(存在)を強化し、日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす。」

ドナルド・トランプの選挙中の発言は「もうアメリカは世界の警察なんかできない」というものだった。
特にアジアはアメリカから遠くて一般の人にとっては全然関心がない地域だ。そこで何が起こっても選挙民は自分事ではない。
ドナルド・トランプも、この地域に、税金から多額の出費を行って日本や韓国、フィリピンに米軍基地を置いておくことに全く意味を感じなかったのだろう。
ところが、大統領就任後に変わったようだ。

現在のアメリカにとっての最大の脅威は中国だ。
中国は「世界の工場」として経済を発展させ、得た資金を使って軍備の増強を強烈な速度ですすめ、まもなくアメリカを打ち負かす事のできるくらいの軍備を持つようになる。
中国の最新軍備はアメリカよりも相当進んでいる。たとえばアメリカの核ミサイルの大部分は基地のような固定した発射台からしか発射できないが、中国のミサイルは潜水艦から発射できる新世代のものだ。潜水艦が太平洋を潜航してアメリカ本土の射程内まで移動できればニューヨークでもロサンゼルスでも核攻撃の対象にできる。
そのためには中国から太平洋に自由に出られるようにしたいわけで、そのために一番いいのは、中間に立ちはだかる日本がアメリカとの関係を絶って中国寄りになること。日本全部は無理でも沖縄だけでも独立して中国寄りの国になれば、沖縄沖を通って太平洋に出ていくことができる。
中国にこれだけの力を与えてしまったのはクリントン政権が中国がWTO入りするのを後押ししたからだ。当時のクリントン政権は、中国を自由貿易勢力に取り込めば韓国やベトナムのように独裁制から脱皮して民主主義化すると考えていたのだ。これがすっかり読み違えだった。クリントン政権最大の失政がこれだったと言っても差し支えないかもしれない。
アメリカの「モノ」の貿易赤字は全体で7343億ドルであり、その47%にもあたる3470億ドルが対中国である。これだけでなく、さらなる覇権を求めて、アフリカや南米に支配を強めている。

アメリカから見れば、力を増す中国に対して日本が取りうる選択肢は3つある。

1)弱体化した、もしくは決断力に欠けるアメリカはもう日本を守ってくれないと判断し、自前の核兵器を開発して独自路線を模索する
2)弱体化した、もしくは決断力に欠けるアメリカはもう日本を守ってくれないと判断し、中国の覇権を受け入れて中国主導のアジア経済圏の一員となる
3)アメリカは、今後も日米安保条約に決められた義務を守り、日本に核の傘を提供し続けてくれるのだと信じ続け、通常戦力及びミサイル防衛能力を増強しつつ、アメリカやその他の同盟諸国との経済的結びつきを維持する

おそらく、多くの日本人は3)しかありえないと考えているだろうが、アメリカの戦略家からすると2)の「中国の覇権を受け入れる」というのが一番簡単で「どうして日本はそうしないのか理解に苦しむ」と言っている人さえいるのである。

ドナルド・トランプは大統領就任にあたってこのことをブリーフィングされて、日本人が望む3)が自分にとっても一番いい選択肢なのだという考えにかわったので、今回の共同宣言に至ったのだろう。
実はこの宣言の冒頭に「核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力」とあるが、「核」という文字が入っているのが大変重要なのである。「核」というこの一文字は中国に当てたもので、「いつでも核兵器を使う準備はできているんだよ」と言いたいのだ。

こういうことが書いてある本がある。

米中もし戦わば
ピーター ナヴァロ
文藝春秋
2016-11-29


この本では、潜水艦からの核ミサイルのみならず、中国の兵器開発は恐ろしいことになっていることが記述されている。特に、中国は人工衛星から核兵器を狙った年に落とすことにできる技術を持っているとのことで、これがあれば人工衛星が通過できる都市が中国からどんなに遠くても直接核攻撃をすることができる。

そうはいっても、現状の中国はあるとあらゆる輸出入を船に頼っている。地続きのヨーロッパには鉄道やパイプラインを建設することで船以外の手段を取ることもできるが、南北アメリカとの貿易にはどうしても船が必要だ。

20170214_Asia
(『米中もし戦わば』より)
 
アメリカから見れば、日本は中国との間の壁なのである。この日本が変に中国に寝返らないようにするのが、目下非常に重要なことなのである。

この本は、あくまで地政学の本である。推理小説のようにも読める。でも、日本というのは、いまやそういう立地にある、いつ災害が来て国全体が崩壊するかもしれない危うい国であることを理解することはできると思う。