毎回毎回楽しみにしている石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」シリーズ。13作目に当たる「裏切りのホワイトカード」が出たので早速読んだ。



いつもいつも面白くて期待を裏切らない本シリーズ。今回もまた素晴らしい。
作品の冒頭、この表現だけで、もう本作の値打ちは証明されている」。

【引用】
俺たちが生きているのは、即決裁判が許された情状酌量のない時代だ。みんな考えるのが面倒で、善悪をさっさと悩まずに決めてしまいたいのである。とくにネットで見かけた他人のトラブルについてはね。不倫は悪、ギャンブルは悪(国家公認のやつ以外)。最近の炎上パターンはお決まりの形ばかり。集団で寄ってたかって袋叩きにして、社会的に葬り去る。ご清潔な人の道から、わずかでもはずれてしまえば、数の力を頼りにした恐怖のバッシングが待っている。
【引用終わり】
(10ページ)

私がこのシリーズを読み始めたのは実はドラマ化後で、2000年の春のことだった。
池袋ウエストゲートパーク DVD-BOX
長瀬智也
ジェネオン エンタテインメント
2000-10-25

主演は長瀬智也さんで脚本は宮藤官九郎さん。チーフ演出は堤幸彦さんの、素晴らしいドラマだった。この作品を契機に出演した窪塚洋介さん、山下智久さん、妻夫木聡さん、坂口憲二さん、小雪さん、佐藤隆太さん、阿部サダヲさんなどの出演者の人気も急上昇した。
東京の池袋西口公園(ウエストゲートパーク)の近くの果物屋の息子である真島 誠(マコト)のもとには数々の難題が持ち込まれて事件を次々に解決していく話。主人公マコトの回想録の形態である。

石田衣良さんがすごいと思うのは、私と同学年の、もうすぐ60歳にもなろうという年齢なのに、実に池袋に集まる若い人たちの実態と気持ちを見事に捉えていること。「若い子大好き」の私もじいさんばあさんと一緒にいるより若い人たちと一緒にいる時間の方が長いけれど、ここまで細かく正しく若い子たちの気持ちをつかむことなんて、とてもできない。努力しているんだか、自然とそうなってしまうのだかわからないけれど、すごい。
上に引用したように息苦しい最近の東京。これをみごとに描写している。連作第一作は1998年のもの。もう20年近くも前なんだね。第一作を読むと色あせて見えるのかな? 今度読んでみよう。