TIMEマガジンは、毎年「今年の人」を発表している。1927年から始まり、昨年90年めを迎えた、アメリカの年中行事の一つである。
昨年2016年は大統領選挙に当選したドナルド・トランプ、その前の2015年はドイツのメルケル首相が受賞している。これまでも2006年の「You」など、変わった受賞者がいた年もあったけれど、政治家などが受賞することも多く、バラク・オバマは2008年と2012年の大統領選挙の年に2回受賞している。
そして今年の受賞者は「沈黙を破る人たち」。セクハラ(セクシャル・ハラスメント)や性的暴行の被害を告発した女性たちである。

http://time.com/time-person-of-the-year-2017-silence-breakers-choice/
「今年の人」掲載号のタイム誌の表紙。
左から:イザベル・パスカル、アダマ・イウ(前)、アシュレイ・ジャッド(後ろ)、スーザン・ファウラー、テイラー・スウィフト。
「沈黙を破る人たち」が意味するのは、ハリウッドから経済界、政界にまで蔓延する旧態依然とした女性軽視に対して戦いを挑んだ彼女たちを称えるということのようだ。表紙を飾ったのは、「沈黙を破る人たち」のなかでも、とくに強烈なインパクトを与えた5人。
イザベル・パスカルは雇用者による性的嫌がらせを明らかにしたメキシコ人農業従事者。
アダマ・イウはカリフォルニア州議会内で日常化していたセクハラを暴いたロビイスト。
アシュレイ・ジャッドは女優で、大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインから性的嫌がらせを受けたと実名告発し、このムーブメントの中心人物。
スーザン・ファウラーはUber社のセクハラ問題を暴露したエンジニア。
テイラー・スウィフトは写真撮影の際に尻をつかんだ元ラジオDJを暴行罪で訴えた。
この動きは、セクハラの象徴のようなドナルド・トランプが大統領となり、政治的な発言が目立った2017年だからこそ起こった動きだと言われているが、この動きを一気に拡散したのがハッシュタグの存在だ。
「#MeToo」というハッシュタグがSNSに付けられ「私にもこんなことがあった」という書き込みが世界中に広がったのだ。TIMEの編集長のEdward Felsenthalはハッシュタグを「強力な加速器」と呼んでいる。
「#MeToo」のハッシュタグは世界に広がり、少なくとも85か国で フランスの #BalanceTonPorc、イタリアの #quellavoltache、スペインや中南米の #YoTambien(スペイン語の#MeToo)などと、各国語のバージョンが生まれた。
ハッシュタグが世界を変えた年、でもあったのである。