158回芥川賞・直木賞が発表された。受賞したのは門井慶喜さんの『銀河鉄道の父』である。

私には、今回の直木賞には取ってほしかった作品がある。伊吹有喜さんの『彼方の友へ』である。

彼方の友へ
伊吹 有喜
実業之日本社
2017-11-17




この作品は、1908年から1955年まで実業之日本社から刊行されていた雑誌『少女の友』を題材にした小説である。

『少女の友』は竹久夢二や中原淳一が活躍した場で、読者を「友」と呼び、戦前戦中戦後という激動の時代に、日本中の少女たちを励まし、センスよくさせ、毎日をワクワクさせてきた雑誌である。

 

小学校卒業後、女中奉公をしていた主人公の佐倉波津子は、ひょんなことからこの雑誌の主筆の雑役婦となる。その後、この雑誌で小説を連載するようになる。小学校卒のまったく学歴のない普通の少女が、である。

戦争が激化してくると、編集部の幹部社員の多くは徴兵されてしまう。その結果、今度は彼女はなんとこの雑誌の主筆となってしまう。

 

全国の読者=「友」のために情熱をもって生きていく主人公とその周囲の前主筆、画家、編集長といった人々が、温かく描写されていて、なんとも気分の良い小説である。

 

たまたま、この作品は実業之日本社の120年記念作品だから、宣伝くさく見えてしまったのかもしれないけれど、温度とスピードが2018年という今の時代にちょうどいい作品である。

この作品に、直木賞じゃなくてもいいから何か冠を上げたいな。