誉田哲也さんは、『ジウ』とか『ストロベリーナイト』のシリーズの警察小説で人気の作家だけれど、私はこっち系はパス。『武士道シックスティーン』に代表される学園ものが大好きだ。
特にその中でも『疾風ガール』『ガール・ミーツ・ガール』といったバンドをやる女子の作品が好きなのだけれど、「武士道」シリーズは2007年に『武士道シックスティーン』、2008年に『武士道セブンティーン』、2009年に『武士道エイティーン』と立て続けに出版された後、2015年に出演者たちが大学生になった『武士道ジェネレーション』が出て以来、出版されていない。『疾風ガール』『ガール・ミーツ・ガール』の柏木夏美シリーズに至っては2009年以来出ていない。
ここにきて、やっとバンド少女たちの物語『あの夏、二人のルカ』が出た。
今から14年前にプロ・デビュー寸前までいったバンドとその解散、そして14年経った今のお話だ。
誉田哲也さんは、擬音の表現がとてもうまい。
『武士道』シリーズでも、県道のシーンは「メーン」「コテー」とかではなく、「ンメアァァーッ」「カテアッ、タァァァー」だった。おもしろいよね。
今回の『あの夏、二人のルカ』では音の表現。すごい。
「ジャーン。ドッドッパンドド、ドパドッ、タンドド、タドドタドドタドドタドドジャッ、ダロロロロロダロロロロロダロロロロ、ジャーンッ、テケトン。」
ああ、もうこれだけでどんなドラム・フレーズか、手に取るようにわかるよね。
最後が「テケトトン」じゃなくて「テケトン」なところに、このドラマーの気持ちがすごく表現されているよね。
16ビートの「ハネ」を説明する場面。
「ツックツックツックツック、ツックツックツックツック」
ああ、そうだよ、こういうことだよ。
特に「、」が入っている場所がいいね。16ビート感がとても良く出ている。最初の「ツックツック」の後に「、」を入れちゃいたくなるけど、ここは2拍終わるところまで我慢しなくっちゃ。
セリフも音楽的でいいよ。
「だって、あたしの後釜なんでしょ、そいつ。だったらリズムキープくらいちゃんとしろよ。スネアのリムショットくらい狙って叩けるようにしとけよ。緊張のあまり手汗ですべるのか? スティック何度も放り投げてんじゃねえよ。そこ、キックはダブルだろ。あたしはずっとダブルで踏んでたぞ。勝手にシングルにして誤魔化してんじゃねえよ。ハット、オープンにするたびにモタってんじゃねえよ。タム回すとき、スティック同士がカチャカチャ当たって、何回も空振ってんじゃねえよ。下手糞、下手糞、ヘタクソ、ドヘタクソーーー。」
ああ。よくこんなこと言ってたなぁ。
ストーリーも素敵だけれど、もう、こういう表現だけで私はオッケ。