誉田哲也さんは、『ジウ』とか『ストロベリーナイト』のシリーズの警察小説で人気の作家だけれど、私はこっち系はパス。『武士道シックスティーン』に代表される学園ものが大好きだ。

特にその中でも『疾風ガール』『ガール・ミーツ・ガール』といったバンドをやる女子の作品が好きなのだけれど、「武士道」シリーズは2007年に『武士道シックスティーン』、2008年に『武士道セブンティーン』、2009年に『武士道エイティーン』と立て続けに出版された後、2015年に出演者たちが大学生になった『武士道ジェネレーション』が出て以来、出版されていない。『疾風ガール』『ガール・ミーツ・ガール』の柏木夏美シリーズに至っては2009年以来出ていない。
ここにきて、やっとバンド少女たちの物語『あの夏、二人のルカ』が出た。

あの夏、二人のルカ
誉田 哲也
KADOKAWA
2018-04-27





今から14年前にプロ・デビュー寸前までいったバンドとその解散、そして14年経った今のお話だ。

誉田哲也さんは、擬音の表現がとてもうまい。
『武士道』シリーズでも、県道のシーンは「メーン」「コテー」とかではなく、「ンメアァァーッ」「カテアッ、タァァァー」だった。おもしろいよね。

今回の『あの夏、二人のルカ』では音の表現。すごい。

「ジャーン。ドッドッパンドド、ドパドッ、タンドド、タドドタドドタドドタドドジャッ、ダロロロロロダロロロロロダロロロロ、ジャーンッ、テケトン。」

ああ、もうこれだけでどんなドラム・フレーズか、手に取るようにわかるよね。
最後が「テケトトン」じゃなくて「テケトン」なところに、このドラマーの気持ちがすごく表現されているよね。

16ビートの「ハネ」を説明する場面。

「ツックツックツックツック、ツックツックツックツック」

ああ、そうだよ、こういうことだよ。
特に「、」が入っている場所がいいね。16ビート感がとても良く出ている。最初の「ツックツック」の後に「、」を入れちゃいたくなるけど、ここは2拍終わるところまで我慢しなくっちゃ。

セリフも音楽的でいいよ。

「だって、あたしの後釜なんでしょ、そいつ。だったらリズムキープくらいちゃんとしろよ。スネアのリムショットくらい狙って叩けるようにしとけよ。緊張のあまり手汗ですべるのか? スティック何度も放り投げてんじゃねえよ。そこ、キックはダブルだろ。あたしはずっとダブルで踏んでたぞ。勝手にシングルにして誤魔化してんじゃねえよ。ハット、オープンにするたびにモタってんじゃねえよ。タム回すとき、スティック同士がカチャカチャ当たって、何回も空振ってんじゃねえよ。下手糞、下手糞、ヘタクソ、ドヘタクソーーー。」

ああ。よくこんなこと言ってたなぁ。

ストーリーも素敵だけれど、もう、こういう表現だけで私はオッケ。








武士道エイティーン (文春文庫)
誉田 哲也
文藝春秋
2012-02-10



武士道ジェネレーション
誉田 哲也
文藝春秋
2015-07-30



疾風ガール (光文社文庫)
誉田 哲也
光文社
2009-04-09