アイドルといわれている人にも筆力の素晴らしい人がいた。乃木坂46の高原一実さんである。
実は私はこの人が乃木坂46の第1回オーディションを通過したアイドルだということは知らないで、本屋でこの本を買ったのである。
この本の題材はアイドル。主人公は、オーディションで既存のアイドル事務所に入ろうとしないで自分でアイドル・グループを作ろうと駆け回る高校1年生の女子。県の東西南北から1人ずつの4人組のアイドル・グループを結成しようと人集めをしていく話。
これも全然知らなかったけれど、雑誌「ダ・ヴィンチ」に2年以上も連載されていた小説なのである。
この人の筆の力はすごい。一つ一つの描写は正確で情景が容易に想像できるし、物語の構成も素晴らしい。優秀な編集者が付いていたのかもしれないけれど、才能がないとこのように一つの物語を2年以上もかかって組み上げていくのは無理だと思う。
タイトルのトラペジウムの意味は、「不等辺四角形」だそうである。東西南北の「輝く星たち」を仲間にした話だからこのタイトルなんだそうである。。
アイドルと呼ばれている人の中にも、こういう才能を持った人がいるんだね。
ちなみにこの本は、オリコンの2018年12月10付BOOKランキングの「文芸書」部門で1位になったのだそうである。
同じアイドルでも、ジャニーズ事務所所属の加藤シゲアキという才能もある。彼もまた素晴らしい。
私は音楽の仕事をかじってはいるけれど、どうしてもアイドルの世界は理解できない。どうすれば人気がでるのか、わからないのだ。
このことを素晴らしく表現している小説がある。朝井 リョウさんの「武道館」である。
こちらはアイドル・グループが武道館公演を目標に頑張っていく姿と、そのウラの葛藤を描いた作品である。
この中に印象的なセリフがある。振り付けの先生が「あんたたち、ここまでよくがんばった」という時に言ったセリフ。
いつでもかわいく、きれいでいなくちゃいけないのに、恋はしちゃダメ。歌とダンスが仕事なのに、あんまり上手すぎるとファンがつかなくなる。ファンは、売れてほしいからCDをいっぱい買うけど、高いものを身に着けているとがっかりする。売れて忙しくなってほしいけど、ブログは頻繁に更新してほしい。求められていることは両立しないのに、そのどっちにも応えてあげてる。そうしたら、この子たちは何でも応えてくれるんだ!って思われて、もっといろんな要求が飛んでくるようになる。
こういうことを言って、メンバーをほめるのである。
芸を極めて上手になるとファンが離れていくアイドルというもの。
どうしても私には良さが理解できない領域である。