Dennis 50

インターネットで本当にコミュニケーションは変わったのかなあ? 購買行動は変わったのかなぁ? できる限り、実験してみたいと思います。

本やDVD、映画、テレビ

2018/01/25(木) 晴れ 結局、どうやってもプログラマーの人とはわかりあえないのか?

Facebookで話題になっていたこの本を早速手に入れて読んでみた。
この本を読んだら、プログラマーと仲良く仕事ができるようになったらいいな、と思って。





結果。
暗澹たる気持ちになった。
私には、どうやらプログラマーの人と仲良くやっていくという素養が一切ないようだ。

私が係るソフトウェアはたいてい金儲けのためのものだ。金儲けをするためには、このソフトウェアを使う人が幸せな気持ちにならなければならない。イヤなことを押し付けるようなソフトウェアでは、繰り返し使いたくなる人は少ないし、使ってもらえないソフトウェアではお金が儲からない。

この本の冒頭に、お祝いのカードを発行するソフトウェアの例が出てくる。
自分の名前とメッセージを入力するとかわいいグリーティング・カードができあがり、これをプレゼントすることができるものだ。
プログラムができあがって使用を始めると
グラフィック・デザイナーが設定した寸法では長い名前の人は名前の表記が途中で途切れてしまうことがわかった。その段階で、自動的に文字のサイズを縮小して入力した名前が全文字表示されるように仕様変更すればいいと思うのだが、プログラマーはなかなか言うことを聞いてくれない。「だって、そういう仕様だったじゃないですか?」
メッセージも同様だ。長いメッセージを入れると切れてしまうか、カードからはみ出してしまう。だったら文字カウンターを付けて、自分が今何文字入力していてあと何文字入力可能なのか表示できるようにすればいいと思う。このときにもプログラマーは言うことを聞いてくれない。「他のことはすべてサーバー・サイドで処理できるけれど文字カウンターはクライアント・サイドでないと処理できない。だから、これが必要なら全く別の開発が必要で、この開発は自分の領域ではない」とのたまう。
あ〜あ、私にも全く同じような経験がある。
仕様の決定の段階で、私がそんなに長い名前の人がいるだなんて想像できなかったこと、あ〜悪うございました。「××ちゃん、お誕生日おめでとうっ」以上の文字数のメッセージを入力する人がいっぱいいるだなんて想像できませんでした。はいはい、悪うございました。
やってみないとわからないことなんて、いくらでもあると思うんだけどね。

受託の時、ほとんどは既存の有名サービスを参考にしている。「このボタンを押すとamazonみたいにこうなる」とか「Facebookみたいな画面遷移がすぐにぱっと行われる」とかを希望する。すると、たいていプログラマーからは「amazonやFacebookみたいなインフラが用意できないんならこの速度でこういうことはムリです」とか言われる。僕らがamazonやFacebook並のインフラを持っていないことなんてみんな知ってるよ。あくまで「ああいう感じ」って言ってるんだから、打合せの冒頭で出席者の大半ががっかりするようなこと言うなよ。

もっと困るのは、仕様決定の際にプログラマーが「むずかしい」「ムリだ」というから別の仕様にしていたら完成間近になってそのプログラマーから「当初の希望通りにできましたっ」とか嬉しそうにやってくること。
仕様変更したの知ってるだろ? 変更した仕様で完成させろよ、もう今や変更前の仕様のことなんか誰もこだわってないよ。

この本を読み進めていくに従って、プログラマーの心理、プログラマーが私にやってほしいこと、プログラマーが喜ぶこと、全てわからなくなった。
もう、私は一生プログラマーという種類の人とお付き合いしないほうがお互いのためのような気がしてきた。
私もがっかりのしっぱなしだし、プログラマーの人もストレスを積み重ねていくしかなかろうからね。
プログラマーの人とこの先一切お付き合いしないで職業生活は全うできるのだろうか?

2018/01/18(木) くもり 直木賞を取ってほしかった作品『彼方の友へ』

158回芥川賞・直木賞が発表された。受賞したのは門井慶喜さんの『銀河鉄道の父』である。

私には、今回の直木賞には取ってほしかった作品がある。伊吹有喜さんの『彼方の友へ』である。

彼方の友へ
伊吹 有喜
実業之日本社
2017-11-17




この作品は、1908年から1955年まで実業之日本社から刊行されていた雑誌『少女の友』を題材にした小説である。

『少女の友』は竹久夢二や中原淳一が活躍した場で、読者を「友」と呼び、戦前戦中戦後という激動の時代に、日本中の少女たちを励まし、センスよくさせ、毎日をワクワクさせてきた雑誌である。

 

小学校卒業後、女中奉公をしていた主人公の佐倉波津子は、ひょんなことからこの雑誌の主筆の雑役婦となる。その後、この雑誌で小説を連載するようになる。小学校卒のまったく学歴のない普通の少女が、である。

戦争が激化してくると、編集部の幹部社員の多くは徴兵されてしまう。その結果、今度は彼女はなんとこの雑誌の主筆となってしまう。

 

全国の読者=「友」のために情熱をもって生きていく主人公とその周囲の前主筆、画家、編集長といった人々が、温かく描写されていて、なんとも気分の良い小説である。

 

たまたま、この作品は実業之日本社の120年記念作品だから、宣伝くさく見えてしまったのかもしれないけれど、温度とスピードが2018年という今の時代にちょうどいい作品である。

この作品に、直木賞じゃなくてもいいから何か冠を上げたいな。

 

2017/11/24(金) 晴れ 翻訳者の音楽性

ナイキの創業者フィル・ナイトが書いた「SHOE DOG」を読んでみた。

SHOE DOG(シュードッグ)
フィル・ナイト
東洋経済新報社
2017-10-27


三省堂書店の神保町本店のレジの店員さんが胸に「SHOE DOG」のバッジを付けていたからだ。村上春樹さんとか、最近だったらカズオ・イシグロのバッジを付けているというなら普通だけれど、東洋経済新報社が出すようなビジネス書のバッジってどういうことなんだろう、と思ったからだ。「スニーカー・マニアなのかな?」

年寄りの回顧録ほどおもしろくないものはない。日経新聞に掲載されている「私の履歴書」なんて最低中の最低だ。老人の自慢話になんか全然興味がわかない。
ところが、この本はおもしろかった。ワクワクするストーリー仕立てだったのだ。ナイキが最初は日本のオニツカタイガーのスニーカーの販売代理店としてスタートしたことや当時はまだナイキという社名じゃなかったこととかはこの本で知ったけれど、そんなことは大したことじゃない。この本の帯に「フィル・ナイトは天性のストーリ・テラーだ ウォーレン・バフェット」と書いてあったので、英語版も読んでみた。



ところが、英語版を読んでみると、別になんともない普通の回顧録だ。確かにここで紹介されるエピソードは、普通の人には体験できないようなものすごいものばかりなのだけれど、日本語版で読んだグイグイ行く感じがさっぱり無い。このドライブ感は訳者が生み出したもののようだ。

訳者は大田黒奉之さん。amazon.co.jpで調べてみると、過去の訳書は
『ジョー・ストラマーの生涯』
『ミック・ジャガーの成功哲学』
『ロック・コネクション』
『ザ・クラッシュ コンプリート・ワークス』
『デヴィッド・ボウイ コンプリート・ワークス』
『キース・リチャーズ、かく語りき』
『イーグルス コンプリート・ワークス』
なんだよ、音楽ものばかりじゃないか。
なるほどねぇ、音楽ものをずっと手がけてきた訳者の日本語が、このストリート相まって心地よくどんどんページを繰らせていたんだなぁ、と思った。音楽性が高い翻訳家なんだねw

そういえば僕の大好きなジェフリー・アーチャーの作品も翻訳家の永井淳さんが亡くなって翻訳者が交代してからワクワク感がなくなってしまった。最近作『クリフトン年代記』もすごく良い作品なんだけれど、今の翻訳ではグイグイ前に行く感じが無いんだよね。

外国の作品を日本語で読むなら翻訳家、すごく大事。もっと良いのは原文でグイグイ読める力を付けることなんだけれどもね。

2017/10/03(火) くもり 伊吹有喜さんの『カンパニー』

久しぶりに気分が明るくなる小説を読んだ。伊吹有喜さんの『カンパニー』である。

カンパニー
伊吹 有喜
新潮社
2017-05-22


スポーツ現場で選手にかかわるトレーナーのことを、「フィジオ」と呼ぶことが多くなった。フィジオとは理学療法士(Physiotherapist)のことである。この小説は、バレエ団に派遣されるフィジオのお話である。

主人公の青柳は勤務先の製薬会社から支援するバレエ団に出向になったリストラ候補。フィジオではない。同じようにリストラ候補になった女性フィジオがこの物語の隠れたヒロインだ。

古手の製薬会社が食品メーカーと合併して社名も変更するにあたり、世界的なバレエ・ダンサー高野の日本公演を企画する。社長の娘が所属している日本のバレエ団が彼の古巣だ。そんな縁もあり、この公演はこのバレエ団で行われることになった。妻子に逃げられた47歳総務課長と選手に電撃引退された女性フィジオ。この二人に課された使命は、冠公演「白鳥の湖」を成功させることだった。女性フィジオは当初高野にまったく信用されず、それでも運転手をやって食いついていく。
スポーツ選手はもちろん大変な肉体労働だが、ダンサーやミュージシャンも肉体労働だ。肉体を使わなくても相当の事ができるようになってしまった現代では、肉体を美しく操るスポーツ選手やダンサー、ミュージシャンは憧れの的になりうる。彼らの体調を整えるのがフィジオの仕事だ。
この本を読んで、ミュージシャンにもフィジオが必要なのかもしれないな、と思った。

一流になるのは、並の才能ではダメだ。この本ではそれを「王者の才能」と言っている。

【引用】「走ってみた、投げてみた、踊ってみた。そうしたらうまくやれたから続けてみた。結果、トップクラスになっていた。そういう人って案外多い。でも、自分がやっていることが死ぬほど好きかと言えば、そうでもない。むしろ嫌いで飽き飽きしているけど、人より上手にできて、金や栄誉が得られそうだから、やっている。そういう人がけっこういる。」【引用終わり】

いるいる、そういう人。
そんなことより「夢中になれる才能が必要なのだ」とこの本では言っている。これ、本当だと思う。
結果として人は楽しんでくれるんだけど、まず何より本人が夢中になれること。これは本当に大事なことだ。
ダンスでも音楽でも不調になることはいくらでもあるし、体調もいつも万全というわけにはいかない。故障をすることもあるし、年齢とともに若いころできたことができなくなったりする。ついついお客さんのことを考えてしまうけれど、そんなことより自分が夢中になっていれば、まぁなんとかなってしまう。

こういうことを考える小説だった。

2017/09/26(火) 晴れ 石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパークXIII」を読んだ

毎回毎回楽しみにしている石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」シリーズ。13作目に当たる「裏切りのホワイトカード」が出たので早速読んだ。



いつもいつも面白くて期待を裏切らない本シリーズ。今回もまた素晴らしい。
作品の冒頭、この表現だけで、もう本作の値打ちは証明されている」。

【引用】
俺たちが生きているのは、即決裁判が許された情状酌量のない時代だ。みんな考えるのが面倒で、善悪をさっさと悩まずに決めてしまいたいのである。とくにネットで見かけた他人のトラブルについてはね。不倫は悪、ギャンブルは悪(国家公認のやつ以外)。最近の炎上パターンはお決まりの形ばかり。集団で寄ってたかって袋叩きにして、社会的に葬り去る。ご清潔な人の道から、わずかでもはずれてしまえば、数の力を頼りにした恐怖のバッシングが待っている。
【引用終わり】
(10ページ)

私がこのシリーズを読み始めたのは実はドラマ化後で、2000年の春のことだった。
池袋ウエストゲートパーク DVD-BOX
長瀬智也
ジェネオン エンタテインメント
2000-10-25

主演は長瀬智也さんで脚本は宮藤官九郎さん。チーフ演出は堤幸彦さんの、素晴らしいドラマだった。この作品を契機に出演した窪塚洋介さん、山下智久さん、妻夫木聡さん、坂口憲二さん、小雪さん、佐藤隆太さん、阿部サダヲさんなどの出演者の人気も急上昇した。
東京の池袋西口公園(ウエストゲートパーク)の近くの果物屋の息子である真島 誠(マコト)のもとには数々の難題が持ち込まれて事件を次々に解決していく話。主人公マコトの回想録の形態である。

石田衣良さんがすごいと思うのは、私と同学年の、もうすぐ60歳にもなろうという年齢なのに、実に池袋に集まる若い人たちの実態と気持ちを見事に捉えていること。「若い子大好き」の私もじいさんばあさんと一緒にいるより若い人たちと一緒にいる時間の方が長いけれど、ここまで細かく正しく若い子たちの気持ちをつかむことなんて、とてもできない。努力しているんだか、自然とそうなってしまうのだかわからないけれど、すごい。
上に引用したように息苦しい最近の東京。これをみごとに描写している。連作第一作は1998年のもの。もう20年近くも前なんだね。第一作を読むと色あせて見えるのかな? 今度読んでみよう。

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