Dennis 50

インターネットで本当にコミュニケーションは変わったのかなあ? 購買行動は変わったのかなぁ? できる限り、実験してみたいと思います。

電子書籍

2010/08/14(土) 曇り 電子書籍もガラパゴス化することが決定した件


20100814


曇り。

この件はいつか書かねば、と思っていたのですが、時間ができたので書きますね。

電子書籍も日本はガラパゴス化することが決定した件
つまり、「あ〜あ、もうこの国なんて捨てたくなる」件。

僕が社会復帰を徐々に始めたのは今年2010年3月中旬のことです。
この時に、社会のどこの部分に復帰しようか、と考えていたのですが、そのときに浮かんできたのが電子書籍の世界でした。広告の世界では大きな失敗をしてしまったので、もう元の世界には戻れないと思っていたので、どこになら社会復帰できる余地があるのだろう、と考えていたのです。そうしたら、このころちょうど、アメリカでスタートアップした自費出版ベンチャーのビジネスモデルを知る機会があったのです。これが大変おもしろくて、興味をひかれ、これを日本に持ってきたいと思ったのです。

■ 原稿作成は、Microsoft WordやAdobe Illustratorなどの好きなアプリケーションで行って、管理画面から流しこむだけ。ブログのように、管理画面に直で書き込むことも可能
■ 文字ばかりの本だけではなくて、写真集も作れ、これに関しては、レイアウト・テンプレートもあるので、たとえば「マイ・レシピブック」や「旅行の写真集」とか「なかよし卒業アルバム」なんていうのが簡単に作れる
■ プロの編集者が編集してくれる(別料金)←これ実はとても重要
■ プロのデザイナーがブックデザインしてくれる(別料金)
■ プロがマーケティングを手伝ってくれる(別料金)
■ 本が完成すると、以下のようなフォーマットで出版し、それぞれの販売ルートに乗せてくれる
1. 印刷した本(著者自らの手売りのほか、希望すればamazonでも販売してくれる)
2. Kindle版(amazon)
3. iPad / iPhone版(iBookStore)
4. その他、Sonyやバーンズ・アンド・ノーブルなどの各社のリーダー版(それぞれのリーダーの売場に卸してくれる)

これはいい!と思い、日本における電子出版の状況に注目するようになったのですね。
ブログやCGM、ソーシャルメディアの誕生によって素人が自由に自分の意見を表に出せるようになってきたのですが、これが近々「本の出版」という方向に行くだろう、と思っていたことと、このアメリカのベンチャーのビジネスモデルがピッタリ一致したのです。

「電子書籍だけ」を作ってくれるサービスはもうすでにあるし、これからもいろんなところがいっぱい出てくると思うのですが、ここのいいところは「印刷した書籍」もワンストップで完成して、amazonなどの流通に乗せてくれることなんです。回想録だろうが、わたしのレシピ集だろうが、電子書籍だけではなくて、ちゃんとした「印刷した本」になる、しかもamazonで買える、っていうのは全然他とはちがうな、と思ったわけです。

USではiPadが4月3日に発売され、日本でも当初の予定よりも少し遅れたけれど5月28日に発売。このころ、電子出版に関する動きが活発化してきました。
4月8日には、日本電子出版協会(JEPA)が、電子書籍の国際規格の一つであり、中心的存在と見られているEPUBに関して、日本語版の仕様案を提出しました。

http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1004/08/news020.html
2010年04月08日 10時00分 更新
タイムリミットは2010年末?:
日本が電子書籍の波に乗るために――JEPAがEPUB日本語要求仕様案を説明

また、これとは別に、W3CでCSS3の検討に関わっている村上真雄氏と日本電子出版協会(JEPA)のEPUB研究会技術主任である村田真氏による「EPUB仕様の日本語組版拡張を目指して(Version 0.8)」が公開されました。この案は、あくまでこの二人による試案ということですが、JEPA内での検討もこの試案をベースに検討が進むのではないかと思われる有力な案です。

http://nadita.com/murakami/epub/epub_JapaneseTextLayout_ja.html
EPUB仕様の日本語組版拡張を目指して(Version 0.8)
2010年6月1日

また、電子出版のディストリビューションを行う会社に、ソニー・凸版・朝日新聞が名乗りを上げました。

http://www.asahi.com/business/update/0527/TKY201005270310.html
電子書籍、国内でも配信 ソニー・凸版・KDDI・朝日
asahi.com 2010年5月27日16時32分

ところが困った事態が発生しました。これがきょうのテーマの「電子出版のガラパゴス化」なんですが、総務省の電子出版に関する懇談会で、電子書籍の企画をガラパゴス化する案が検討され始めたのです。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000071341.pdf
総務省 デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会
平成22年6月22日(火)資料2  デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会報告(案)(pdf)

インプレス「インターネット・ウォッチ」では、以下のように報道しています。

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100622_376075.html
INTERNET Watch 2010年6月22日
電子書籍の3省懇談会、著作権集中管理や統一中間フォーマットの検討を提言

最大の問題は、この「中間フォーマット」なんです。
電子書籍の発生はアメリカですから、最初の規格には縦書きも、よみがな(ルビ)も、日本語的な禁則処理(「。」や「、」が行の先頭にきてはいけない、など)も折り込まれていません。でも、日本語で本を出すなら、縦書きで、ルビ付きで出したいわけです。
世界規格と目されているEPUBの日本語版は完成していませんが、pdfフォーマットなら今でも縦書きルビ付きの本は出版されています。pdfは、iPadでもamazonのKindleでも採用されています。

20100814縦書きルビ

紙の本とちがって電子書籍は文字のサイズを読み手が変更することができます。pdfを使った電子書籍だと、全体を拡大したり縮小したりすることはできますが、文字単位で大きくしたり小さくしたりすることはできません。EPUBは、最初から文字単位の拡大縮小を前提にしています。この時に、先ほどのよみがな(ルビ)や禁則処理が問題になるのです。文字が拡大縮小されると、それにともなってよみがな(ルビ)の位置もずれてくれないと困る。その際に、行の頭に句読点がきてしまっては困る、というわけですね。
こんなことはhtmlの規格でもすでに経験済みで、いい案も出されているのにもかかわらず、政府の懇談会は、シャープの「XMDF」を中間フォーマットとして使う方向に向いているのです。
この前週の7月27日、凸版印刷と大日本印刷(DNP)は「電子出版制作・流通協議会」を設立し、東芝、パナソニック、朝日新聞、毎日新聞、NTTドコモなどが参加を表明しました。この協議会は総務省・文部科学省・経済産業省の「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」で決まる予定の標準フォーマット、つまりシャープのXMDFを採用して、日本の電子書籍を標準化しようというものなんです。

XMDFというのはシャープの「ザウルス」用に作られた文書フォーマットで、「ガラパゴス」の象徴、日本の携帯電話の標準規格です。縦書きやルビなどにきめ細かく対応し、これまで日本で発行された約1万点の電子書籍のほとんどはXMDFで書かれているのですが、この実績が懇談会で認められているのです。

問題はここからです。

XMDFファイルは独自のソフトウェアを使用して変換したもので、仕様は非公開、つまりブラックボックス化されています。変換には1冊ごとにライセンス料が発生し、データを見るためには守秘契約を結ばなければなりません。出版業界は永遠にシャープにライセンス料を払い続けなければなりません。こうなると、とても個人が自分の本を簡単に出すことなんかできません。Kindle Storeなどで入手した海外のファイルも、XMDF端末で読むことはできません。

「日経トレンディ」などには、この決定に少しは納得しているようですけれども、わたしは大反対!

http://builder.japan.zdnet.com/sp/epub2010/story/0,3800103623,20416869,00.htm
電子書籍の中間フォーマットは日本のガラパゴス化を進めるか?
海上忍
ZDネット 2010/07/15 15:09

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100802-00000006-trendy-mobi
熱を帯びる電子書籍の配信プラットフォーム競争――日本独自の規格は正しい選択か?
nikkei TRENDYnet8月 2日(月) 11時48分配信 / テクノロジー - モバイル

ケータイ、テレビ、と、日本政府はガラパゴス化を推進しているのですが、これにどんな意味があるのでしょう?
国内産業の保護、と言いますが、逆に日本の独自規格が障害になって海外に出ていけなくなってしまった日本のケータイ・メーカーと同じことを、また電子書籍リーダーでもやろうというのですね。
電子書籍を読むのは、いますでにアメリカで売っているようなiPad、Kindle、SONYリーダーなどでいいじゃないですか。逆に、これらの機種では、日本で販売される電子書籍が読めなくなるんです。

本当に、この国を捨てたくなる決定です。
一体、政府は民間をどれだけ邪魔すればいいのでしょう?

気をつけよう 電子書籍に関する議論が「対:紙」にならないように


僕は、電子書籍がこれからのコミュニケーションを変えてゆく大きなエンジンになるだろうと思っています。
音楽業界にいた僕は、音楽の流通がレコードやCDからダウンロードに変わっていくということは予測していたけれど、それに乗っかることはなく業界から逃げ出したことがあるので、電子書籍の流れからは逃げ出さないでいようと思っています。

気をつけなくてはいけないのは、論点が「電子書籍 対 紙」になっていきがちなので、議論がそうなったら流れをかえること。
すぐにインターネット対リアル、とかの二軸の議論にしてしまいがちですが、そんなに単純なものではありません。
気をつけて、議論を進めていきたいと思います。

先週iPadがアメリカで発売されて、電子書籍に陽のあたるこの時期にいろんなコトが発表されているので、メモっておきます。

1.
日本電子出版協会(JEPA)が、EPUB日本語要求仕様案を策定したこと。
電子書籍の国際規格も、htmlなどと同じように定められることになるのですが、この中心にいるのが米国の電子書籍標準団体IDPF(International Digital Publishing Forum)です。ここで定められる規格が唯一の標準規格になるということが決まったわけではありませんが、今のところ有力です。
現在のバージョンは、「OPS (Open Publication Structure) 2.0v1.0」です。米国の機関ですから、自然と英語のものを中心に考えていくことになるので、縦書きであるとか、縦書きの中に横文字が入ることだとか、ルビ(よみがな)だとかは、現状IDPFでは考慮していません。このことに関して注文をつけたものです。
要求仕様案(英語)本文は
http://www.jepa.or.jp/press_release/reqEPUBJ.html
日本語の解説は
http://www.jepa.or.jp/press_release/epub_jp_pressrelease.html
です。
これは聞いた話なんで本当かどうかわかりませんが、日本としては、同じ漢字を使う中国が縦書きの仕様を要求するだろうから、その尻馬に乗るつもりだったんだそうです。ところが、中国は電子書籍の仕様には横書きがあれば十分との立場を取ったので大慌てした、ということでした。
何もアクションせずに、知らないうちに電子書籍=横書きのみ、にならなくて良かった、っていうことです。

2.
amazonから買ったKindle用の書籍がiPadでも読めるアプリをamazonが無料で配布しています。
20100407amazon
ダウンロードは
http://itunes.apple.com/jp/app/kindle/id302584613?mt=8
から。
これで出版社側は安心してamazonで供給できるようになったというわけです。

今日はこの二つ。

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