今年のSXSW (South by South West) が中止になった。コロナ・ウイルスの影響である。
SXSW Canceled as Austin Mayor Declares Local Disaster Over Coronavirus [Billboard]
SXSWは音楽、映画、IT、教育などをリードするアメリカ随一のイベントで、毎年3月にテキサス州オースティンで開かれる。世界の新人アーティストにとってはショーケースでアメリカ音楽産業の人たちに自分たちをアピールする機会だ。昨年2019年は、ブレイク直前だったBillie Eilish なども出演した。
https://schedule.sxsw.com/2019/artists/2011697
今年も、多くのアーティストが未来をかけてオースティンに向かう手はずを整えていたはずなので、とても残念である。
中止を発表する市長の姿も陰鬱なものだった。
オースティンの街はSXSW開催期間中は街の中心部の交通を遮断してイベントを実施するのだ。
住民としては交通の遮断なんて迷惑きわまりない。タクシーの運転手なんかはブゥブゥ言っているけれど、それでもこの街のコミュニティは、SXSWの成功を祈って協力しているのだ。
オースティンは、もともと単なる大学街だったのだそうだ。
1839年にテキサス共和国の首都が置かれ、現在はテキサス州の州都だ。1930年代にコロラド川の開発によって家具や煉瓦、食料品、製油、皮革などの工業が発展した。また、1940年代に軍事産業も成立した。
顕著な発展を支えているのがIT産業だ。産学連携の元、目覚ましい経済成長と人口増加を誇っている。郊外を含め、周辺は丘陵地が多いためシリコンバレーにあやかってシリコン・ヒルズと名乗っているのだが、この大きなきっかけはDellだ。テキサス大学オースティン校出身のマイケル・デルがこの地にDellの本社を置き、これが契機となった。現在はサムスン電子が全米最大の拠点としているほか、インテルやグーグルの開発拠点となっている。ナノテクノロジーやバイオテクノロジーなどIT以外の技術の集積を図っているのが最近の姿だ。
でも、街としてはこの街の知名度と好感度を上げるのにSXSWのようなイベントをとても重視していて、SXSW以外にも音楽フェスティバルの「オースティン・シティ・リミット」とF1の「アメリカ・グランプリ」を市として大きなバックアップをしているのだそうだ。
音楽産業に従事する者として今回のSXSWの中止はとても悲しいけれど、経済的にも街のイメージにも大きなダメージを与える今回の決定を勇断をもって下した市長以下の市の人々に大きな敬意を表明したい。