Dennis 50

インターネットで本当にコミュニケーションは変わったのかなあ? 購買行動は変わったのかなぁ? できる限り、実験してみたいと思います。

音楽のこと

2016/10/12(水) 晴れ ペンパイナッポーアッポーペン、YouTube ミュージック全世界1位おめでとう!

ピコ太郎さんの45秒のビデオ『(PPAP)ペンパイナッポーアッポーペン(PEN-PINEAPPLE-APPLE-PEN Official)』が、YouTubeの週間再生回数ランキング「ミュージック全世界トップ100」(9月30日〜10月6日付)で1位を獲得した。
まことにめでたいことである。

ペンパイナッポーアッポーペン、世界ランキング1位に輝く(動画)【ハフィントンポスト】





ピコ太郎の「PPAP」は1週間に570万再生されてBillboardの「Streaming Songs」で46位、総合チャートである「Hot 100」で77位に入った。
この曲の演奏時間は45秒。これはHot 100に入った曲の中で古今東西最短、という記録を樹立した。
Piko-Taro's 'PPAP' Is the Shortest Song Ever on Billboard Hot 100 [Billboard]

なんか「日本人初」とか、そういう論調が目立つけど、別にYouTubeビデオの視聴に「日本人だから見る」とか「バルバドス人だから見ない」というようなことなはいので、こういう論調を見かける度に白けてしまいます。

2016/10/10(月)(祭) 曇り デジタル・ライツ・エージェンシー「マーリン」のオフィスが日本にできた

イギリスに本部を置く音楽のデジタル・ライツ・エージェンシー「マーリン」のオフィスが日本にできた。

邦楽ネット配信拡大へ 「第4のメジャー」が上陸【朝日新聞】
2016年10月10日
20161010Merline_Asahi
http://www.asahi.com/articles/ASJB77SCFJB7UCVL02M.html

イギリスの音楽業界メディアでも報道されている。

MERLIN OPENS JAPAN OFFICE IN TOKYO, HEADED BY HAJI TANIGUCHI [Music Business Worldwide]
2016年10月10日
20161010_MusicBusinessWorldwide
http://www.musicbusinessworldwide.com/merlin-opens-japan-office-tokyo-headed-haji-taniguchi/

マーリンジャパンのゼネラル・マネージャーには、ソニー・ミュージックとエイベックスで長く音楽の権利ビジネスを手がけてきた谷口 元さんが着任した。

日本でも音楽ストリーミング・サービス「Spotify」がスタートし、CDやレコード以外の、デジタルでの収益化が重要になっている。
YouTubeやApple Music、Spotifyなどのデジタル配信サービスに音源を提供する際に、3大メジャー・レーベルと比較して独立系レーベルは劣後の条件で契約されている現状がある。Apple Musicでメジャー・レーベルのアーティストが行っているキャンペーンは独立系レーベルでは実施できない、ということがよくある。このレーベルがメジャーと契約してメジャーの一角を占めるようになると急にこれが実現できるのである。
一方で、ストリーミング時代におけるメジャー・レーベルの存在意義も問われている。
最近の話題はフランク・オーシャンである。
フランク・オーシャンは2016年8月19日にビジュアル・アルバム『Endless』をApple Music限定で公開し、その翌日8月20日に17曲入りのフルアルバム『Blonde』をiTunesストアとApple Music限定でリリースした。
先にリリースされたビジュアル・アルバム『Endless』はフランク・オーシャンが所属してきたレーベルDef Jam/Universal Music Groupを通してリリースされ、これにてメジャーとの契約は完了。翌日発売のフル・アルバム『Blonde』は"Boys Don't Cry"というレーベルからリリースされており、これはビッグ・アーティスト側から「メジャー・レーベルなんて不要」と言われたのと同じことである。

CDを大量にプレスして販売していた時代には、この製造と流通に大きな資本が必要だったので、アーティスト自身がこれを行うなどということは、とても実現できないことだった。

マーリンは、世界中の独立系レーベルを取りまとめて配信業者と交渉し、3大メジャーに劣らない条件を引き出すことを目的に活動を行っている。
このような機関が機能すると、ますますメジャー・レーベルの存在価値はなくなっていく。

日本という音楽マーケットは、独立系レーベルの群雄割拠する場所である。EXILEなどが所属しているエーベックスも、AKB48などのキング・レコードも、サザン・オールスターズやSMAPなどが所属するビクターも、全部独立系レーベルである。YouTubeやApple、Spotifyが相手にする「メジャー」とは、ユニバーサル、ソニー、ワーナーの3社しかないのだから。

マーリンは会員制で、レーベルが会員となり、Spotifyなどからの売上の3%をマーリンに落とすしくみなのだという。現在、47カ国に780社の会員がいるのだという。
業界で信用の厚い谷口さんのことだから、多数の会員を日本でも集めることになるのだろう。
今後、この日本という音楽マーケットでマーリンジャパンがどんな役割を果たしていくのか、大変楽しみである。

2016/10/06(木) 晴れ どのくらい日本のレコード産業はガラパゴスなのか?

「日本のレコード産業がどのくらいガラパゴスなのか?」を説明するのに、ずいぶん前に作成したグラフをご紹介する。

まず最初に、日本は世界第2のレコード・マーケットである。

20161006_MusicSales
出典:IFPI(国際レコード産業連盟) http://www.ifpi.org/global-statistics.php

中国は毎年60%ずつ伸びているのでいずれレコード・マーケットでも大きくなるとは思うが、まだまだ小さい。
上位を占めているのはアメリカ合衆国とドイツやイギリス、フランスなどの西ヨーロッパの国である。
このグラフを見るとわかるように、アメリカ合衆国のマーケットは他国に比べて大きく、日本の2倍近く、ドイツの3倍以上ある。世界のレコード産業は「アメリカと、その他の国たち」で成り立っている。
レコード産業の産業としての伸びは大変小さく、もはや「日本だけ」「インドだけ」のマーケットでは小さくなってきており、ここ数年で言うと、いかにアメリカで売るか、が焦点となる。
メジャー・レコード各社は先を見てアフリカや中国への投資をスタートしているが、これらが大きな売上を占めるのは相当先のことになるだろう。
日本のレコード産業が、ほぼ邦楽のアーティストだけで商売が成り立っているのは、このマーケットの大きさからだ。マーケット・サイズが韓国のように小さいと、自国出身のアーティストだけではビジネスが成り立たなくなるからだ。
韓国のアーティストは韓国だけではとても食ってはいけないので、ワールドワイドに活動しようとする。日本に軸足をおいているアーティストもいるし、中国中心のアーティストもいるし、マカオで頑張っているアーティストもいる。もちろんアメリカにもいる。2ne1などだ。彼らは、日本で活動するK-Popアーティストがそこそこ日本語ができるようになっているのと同じように、中国に行ったら中国語、アメリカなら英語でのコミュニケーションができるように訓練されている。


さて、レコード産業の売上を内容ごとの明細で見ると、ここでいかに日本が特殊な国かということがわかる。

20161006_02
出典:IFPI(国際レコード産業連盟) http://www.ifpi.org/global-statistics.php

2014年、世界全体のレコード産業の売上の
46%がCD
46%が音楽配信
6%が演奏権
2%がシンクロナイゼーション(日本語では「映画録音権」。音楽が映画やCMなどで使用されたときの収入)
であった。
ところが
2014年の日本は
78%がCD
17%が音楽配信
3%が演奏権
1%がシンクロナイゼーション
である。
世界最大のレコード・マーケットであるアメリカ合衆国では
26%がCD
71%が音楽配信
演奏権は0%
4%がシンクロナイゼーション
となっていて、構成比が全く違う。
アメリカの人は「音楽は当然、配信で聞くよね」と思っているのと、日本の人は「CD」という差なのだ。

このグラフを見ても分かる通り、ドイツやオーストリアもCDの比率が高い。
新興マーケットである中国では逆に87%が音楽配信でCDは12%しかない。

■まとめ
・世界の音楽マーケットのことを語るときは、売上比重の高いアメリカ合衆国中心に話がなされる
・そのアメリカでは音楽配信がメインとなっていて、CDの売上は僅かなので、あらゆるビジネス・トークは配信を中心になされる

2016/10/04(火) 曇り 音楽ストリーミング・サービスの顧客満足度

顧客満足度調査に関する世界的機関「J.D. パワー」が、アメリカにおける音楽ストリーミング・サービスに関する顧客満足度調査の結果を発表した。

“Social” Becomes Key Battleground for Streaming Music Providers
2016年9月28日
J.D. Power
20161004_JDP_MusicStreaming
http://www.jdpower.com/press-releases/2016-streaming-music-satisfaction-study

この調査は2016年6月から7月に、音楽ストリーミング・サービスを利用している4,482名を対象に行われた。
満点は1,000ポイントである。

この結果で驚くべきは、どのサービスも非常に満足度が高いこと。
1位のApple Musicが1,000ポイント満点中834ポイント。
2位のRhapsodyが826ポイント。(Rhapsodyは調査実施中の2016年7月に名前が「Napster」と変わった)
3位のPandoraが825点。
僅差で、しかも非常に高レベルである。
業界平均でさえ、822ポイントである。
音楽ストリーミング・サービス各社はいずれも高い満足度を示しているのである。

無料のサービスと比べ有料サービスのほうが満足度が高く、
Apple Musicがよくやる独占コンテンツは顧客の満足度を向上させているといった具合に
いい事尽くめである。
こんなにユーザーに満足してもらえるのなら、もう少し余計にお代をいただいて、これを音楽業界に分配してもらいたいものである。
しかし、音楽ストリーミング・サービスはいま低価格化している。
Amazonがスタートさせる「Amazon Music」は、Amazonが販売している「Echo」というスピーカーでストリーミングを楽しむユーザーには月額$3.99、Amazon Prime会員は月額$7.99と、現在の相場の月額$9.99を下回る料金を打ち出しており、他社もこれに追随する傾向にある。

音楽で楽に稼げるようには、なかなかならないなぁ。

2016/10/03(月) 曇り 『誰が音楽をタダにした?』

日本の人はお行儀が良いので、あまり海賊版のCDやmp3ファイルに手を出さない。でも、世界ではそんなことはない。お隣の韓国なんかはこれが極端で、大抵の音楽はネットで海賊版がただで手に入るからと、韓国のiTunes Storeにはミュージックのストアは存在しないくらいだ。

スティーヴン・ウイット著、関美和訳の『誰が音楽をタダにした?』を読んだ。



いまや音楽はタダだ。
YouTubeでシングル曲なら気前よくレコード・レーベルが無料で聞かせてくれるし、アルバムの曲も YouTube mp3 (http://www.youtube-mp3.org/) などでmp3化したファイルを聞く事ができる。
この本は、この時代の前のパソコンで聞けるmp3を利用した海賊版ファイルの流通の話だ。

mp3という、まぁまぁ日常使用には問題ないオーディオ圧縮方式が出てきて、インターネット上でオーディオ・ファイルを流通させることが容易になった。
多くの人はこういう話だと「ナップスター」を想起するかもしれないけれど、「ナップスター」はオンラインの海賊ファイルを素早く探し出せるようにしたサービスであって、ナップスター自身が海賊オーディオ・ファイルを所有していたわけではなかった。
世界中のマニアックな人達が、自分には何の得もないのに、どこかから発売前のCDを盗んできて、mp3化してインターネット上に置いたのである。

これがもう一般化してしまい、いつしか「お金を出して音楽を聞くなんてバカげている」という風潮になってしまった。この結果、韓国のように社会全体が音楽にお金を払わなくなってしまったのである。

一度「タダで当然」となってしまった社会にもう一度お金を出してもらうようにするのは、実に大変なことだ。いまはその途中。
AppleがiTunes Storeで音楽をダウンロードできるようにしたこと、数多くのプレイヤーが月額固定制の音楽ストリーミング・サービスをスタートさせたこと。
この先、音楽の供給側が一番頑張らなくてはいけないのは、お金を払いたくなる音楽を世に送り出すことだ。
従来と同じようなものを制作して流通させても、結局タダで聞いてしまっておしまいだ。手段は20世紀のようにCDのようなパッケージでも21世紀風のストリーミング・サービスでも良い。
とにかく、お金を支払いたくなる作品を世に出す努力が必要だ。
 

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