Dennis 50

インターネットで本当にコミュニケーションは変わったのかなあ? 購買行動は変わったのかなぁ? できる限り、実験してみたいと思います。

ミュージック・ビジネス

2016/10/06(木) 晴れ どのくらい日本のレコード産業はガラパゴスなのか?

「日本のレコード産業がどのくらいガラパゴスなのか?」を説明するのに、ずいぶん前に作成したグラフをご紹介する。

まず最初に、日本は世界第2のレコード・マーケットである。

20161006_MusicSales
出典:IFPI(国際レコード産業連盟) http://www.ifpi.org/global-statistics.php

中国は毎年60%ずつ伸びているのでいずれレコード・マーケットでも大きくなるとは思うが、まだまだ小さい。
上位を占めているのはアメリカ合衆国とドイツやイギリス、フランスなどの西ヨーロッパの国である。
このグラフを見るとわかるように、アメリカ合衆国のマーケットは他国に比べて大きく、日本の2倍近く、ドイツの3倍以上ある。世界のレコード産業は「アメリカと、その他の国たち」で成り立っている。
レコード産業の産業としての伸びは大変小さく、もはや「日本だけ」「インドだけ」のマーケットでは小さくなってきており、ここ数年で言うと、いかにアメリカで売るか、が焦点となる。
メジャー・レコード各社は先を見てアフリカや中国への投資をスタートしているが、これらが大きな売上を占めるのは相当先のことになるだろう。
日本のレコード産業が、ほぼ邦楽のアーティストだけで商売が成り立っているのは、このマーケットの大きさからだ。マーケット・サイズが韓国のように小さいと、自国出身のアーティストだけではビジネスが成り立たなくなるからだ。
韓国のアーティストは韓国だけではとても食ってはいけないので、ワールドワイドに活動しようとする。日本に軸足をおいているアーティストもいるし、中国中心のアーティストもいるし、マカオで頑張っているアーティストもいる。もちろんアメリカにもいる。2ne1などだ。彼らは、日本で活動するK-Popアーティストがそこそこ日本語ができるようになっているのと同じように、中国に行ったら中国語、アメリカなら英語でのコミュニケーションができるように訓練されている。


さて、レコード産業の売上を内容ごとの明細で見ると、ここでいかに日本が特殊な国かということがわかる。

20161006_02
出典:IFPI(国際レコード産業連盟) http://www.ifpi.org/global-statistics.php

2014年、世界全体のレコード産業の売上の
46%がCD
46%が音楽配信
6%が演奏権
2%がシンクロナイゼーション(日本語では「映画録音権」。音楽が映画やCMなどで使用されたときの収入)
であった。
ところが
2014年の日本は
78%がCD
17%が音楽配信
3%が演奏権
1%がシンクロナイゼーション
である。
世界最大のレコード・マーケットであるアメリカ合衆国では
26%がCD
71%が音楽配信
演奏権は0%
4%がシンクロナイゼーション
となっていて、構成比が全く違う。
アメリカの人は「音楽は当然、配信で聞くよね」と思っているのと、日本の人は「CD」という差なのだ。

このグラフを見ても分かる通り、ドイツやオーストリアもCDの比率が高い。
新興マーケットである中国では逆に87%が音楽配信でCDは12%しかない。

■まとめ
・世界の音楽マーケットのことを語るときは、売上比重の高いアメリカ合衆国中心に話がなされる
・そのアメリカでは音楽配信がメインとなっていて、CDの売上は僅かなので、あらゆるビジネス・トークは配信を中心になされる

2016/10/04(火) 曇り 音楽ストリーミング・サービスの顧客満足度

顧客満足度調査に関する世界的機関「J.D. パワー」が、アメリカにおける音楽ストリーミング・サービスに関する顧客満足度調査の結果を発表した。

“Social” Becomes Key Battleground for Streaming Music Providers
2016年9月28日
J.D. Power
20161004_JDP_MusicStreaming
http://www.jdpower.com/press-releases/2016-streaming-music-satisfaction-study

この調査は2016年6月から7月に、音楽ストリーミング・サービスを利用している4,482名を対象に行われた。
満点は1,000ポイントである。

この結果で驚くべきは、どのサービスも非常に満足度が高いこと。
1位のApple Musicが1,000ポイント満点中834ポイント。
2位のRhapsodyが826ポイント。(Rhapsodyは調査実施中の2016年7月に名前が「Napster」と変わった)
3位のPandoraが825点。
僅差で、しかも非常に高レベルである。
業界平均でさえ、822ポイントである。
音楽ストリーミング・サービス各社はいずれも高い満足度を示しているのである。

無料のサービスと比べ有料サービスのほうが満足度が高く、
Apple Musicがよくやる独占コンテンツは顧客の満足度を向上させているといった具合に
いい事尽くめである。
こんなにユーザーに満足してもらえるのなら、もう少し余計にお代をいただいて、これを音楽業界に分配してもらいたいものである。
しかし、音楽ストリーミング・サービスはいま低価格化している。
Amazonがスタートさせる「Amazon Music」は、Amazonが販売している「Echo」というスピーカーでストリーミングを楽しむユーザーには月額$3.99、Amazon Prime会員は月額$7.99と、現在の相場の月額$9.99を下回る料金を打ち出しており、他社もこれに追随する傾向にある。

音楽で楽に稼げるようには、なかなかならないなぁ。

2016/10/03(月) 曇り 『誰が音楽をタダにした?』

日本の人はお行儀が良いので、あまり海賊版のCDやmp3ファイルに手を出さない。でも、世界ではそんなことはない。お隣の韓国なんかはこれが極端で、大抵の音楽はネットで海賊版がただで手に入るからと、韓国のiTunes Storeにはミュージックのストアは存在しないくらいだ。

スティーヴン・ウイット著、関美和訳の『誰が音楽をタダにした?』を読んだ。



いまや音楽はタダだ。
YouTubeでシングル曲なら気前よくレコード・レーベルが無料で聞かせてくれるし、アルバムの曲も YouTube mp3 (http://www.youtube-mp3.org/) などでmp3化したファイルを聞く事ができる。
この本は、この時代の前のパソコンで聞けるmp3を利用した海賊版ファイルの流通の話だ。

mp3という、まぁまぁ日常使用には問題ないオーディオ圧縮方式が出てきて、インターネット上でオーディオ・ファイルを流通させることが容易になった。
多くの人はこういう話だと「ナップスター」を想起するかもしれないけれど、「ナップスター」はオンラインの海賊ファイルを素早く探し出せるようにしたサービスであって、ナップスター自身が海賊オーディオ・ファイルを所有していたわけではなかった。
世界中のマニアックな人達が、自分には何の得もないのに、どこかから発売前のCDを盗んできて、mp3化してインターネット上に置いたのである。

これがもう一般化してしまい、いつしか「お金を出して音楽を聞くなんてバカげている」という風潮になってしまった。この結果、韓国のように社会全体が音楽にお金を払わなくなってしまったのである。

一度「タダで当然」となってしまった社会にもう一度お金を出してもらうようにするのは、実に大変なことだ。いまはその途中。
AppleがiTunes Storeで音楽をダウンロードできるようにしたこと、数多くのプレイヤーが月額固定制の音楽ストリーミング・サービスをスタートさせたこと。
この先、音楽の供給側が一番頑張らなくてはいけないのは、お金を払いたくなる音楽を世に送り出すことだ。
従来と同じようなものを制作して流通させても、結局タダで聞いてしまっておしまいだ。手段は20世紀のようにCDのようなパッケージでも21世紀風のストリーミング・サービスでも良い。
とにかく、お金を支払いたくなる作品を世に出す努力が必要だ。
 

2016/10/02(日) 晴れ ネット・オークションでのCD、アーティスト・グッズなどの出品商品数と落札率がビジネスのヒントになるかも

オークションというのは、ときに過熱して商品の価値からかけ離れたとんでもない価格を出すこともあるけれど、おおむね、人々が求める価値相応の値段で落札される。これは、古典的な経済学の基本となっている。

オークファンという会社は、国内オークション市場の取引データを、過去10年分300億件以上蓄積しているのだそうだ。

最近、音楽関係のオークションというとコンサート・チケットの二次流通の話ばかりになるけれど、「日経ビッグデータ」ではCDとかグッズなどのチケット以外のアーティスト関係の物品の出品数、落札数、この比率にあたる落札率を報じている。

165万件のオークション取引データで判明、落札率No.1アーティストはBABYMETAL【日経ビッグデータ】
http://business.nikkeibp.co.jp/atclbdt/15/258689/092100018/

この記事によると、
出品数が多いのがAKB48と嵐
落札率が高いのがBABYMETAL
なのだという。

20161002_Auction
http://business.nikkeibp.co.jp/atclbdt/15/258689/092100018/?SS=imgviewbdt&FD=-654637068
(↑ここに、大きくて見やすいグラフィックがあります)

 
日本のアーティストの人気の具合はオリコンのヒット・チャートが中心である。この他に、よくテレビに出る人はタレント好感度調査などもあるが、やはりオリコンが中心となる。
アメリカのBillboard誌が採用しているニールセンのSound Scanは、CDやダウンロード、ストリーミングの他に、ソーシャル・メディアでの人気度など複合的に計算を行っているが、その方式はブラックボックスに包まれている。

それに対し、オークションの出品数や落札率は、音楽ライトユーザーの動向がわかる良い指標かもしれない。
BABYMETALは、グッズなどの供給があまりにも少ないがゆえに高い落札率をもつ。
おそらくAKBも、秋葉原にショップなんか出しておらず、グッズの供給が足りなければこのような状況になったのではないか。

アメリカの「Billboard Touring Conference」 http://www.billboardtouringconference.com/ のようなイベントでも価格設定の問題が取り上げられるなど、アーティストごとに適切な需要と供給のバランスを見つけ、その結果グッズ類などの価格や販売ルート(AKB48のように直売所を設けるのか、レア度を上げるために会場ごとに違うグッズを売るなど)を決定するのが大変むずかしい。
このために、オークションのデータは使えるかもしれない、と、この記事を見て思った。

2016/09/29(木) 晴れ Spotifyが日本でもサービスを開始した

Spotifyが日本でもサービスをスタートした。招待コードを送ってもらってスタートするしくみである。
 
20160929_spotify-entry
https://www.spotify.com/jp/invite/

料金体系は無料のFreeプランと月額980円のPremiumプラン。
有料にするとできることが上手にまとまっているサイトがあったので紹介しておこう。
20160929_spotify-free-premium
http://www.tokyo-indie-band.com/2016/10/spotify-free-vs-premium.html

なおかつ、Spotify自身が「iTunesでのSpotify料金は割高です」として、iTunesではなくて直接の支払を求めている。
20160929_spotify-iTunes
https://support.spotify.com/jp/article/spotify-through-the-app-store/


他の国に先駆けて日本で最初に導入されたのが歌詞の表示機能。20160929_spotify-lyrics
歌詞全文が表示されて再生中の行が明るく表示される機能。
なかなか良い。

Spotifyはインディーズ・アーティストに優しく、専用のページを利用すると、自分たちでプロフィールを書いたり、好きな写真をアーティスト紹介の際に使ってもらったり、コンサート・ツアーのスケジュールを入れておいてユーザーの近くの街で公演するときにはフラグを立ててくれたりする。
Spotify Artists

今回聴取可能な楽曲は約4000万曲と、ものすごく多いのだが、日本で今サービスを成功させるためには邦楽の充実が必要だ。
今週のオリコン・ウィークリー・チャート ベスト10でSpotifyで聞けるのは10曲中4曲。
×1. "Sha la la☆Summer Time" Kis-My-Ft2 
○2. "YAMATO☆Dancing" BOYS AND MEN
×3. "ユメ語るよりユメ歌おう" Aqours
×4. "Shut up!! Shut up!! Shut up!!" EXILE THE SECOND
○5. "Swan" [Alexandros]
×6. "世界に一つだけの花" SMAP
×7. "夏のOh!バイブス" バンドじゃないもん!
○8. "Joy-ride 〜歓喜のドライブ〜" EXILE
×9. "Brave Freak Out" LiSA
○10. "どっとjpジャパーン!" たこやきレインボー
AKB48はあるけれどジャニーズは一切なし、宇多田ヒカルもなし。高齢者に人気のサザンオールスターズや松任谷由実やミスター・チルドレンなんかも一部を除いてほとんどなし。
日本資本のAWAやLINE MUSICが破れない壁は、やはりスウェーデンに本拠を置くSpotifyは破れない。
この先、この島国の音楽ユーザーとどう付き合っていくのかは見つめていくしかないけれど、すごく大変だと思うよ。
 
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